中国の海上民兵とは、中国共産党が南シナ海や東シナ海で領有権を主張するために利用する、漁民や船員などの民間人からなる組織です。海上民兵は、中国人民解放軍や中国海警局と連携して、他国の漁船や軍艦に対して威嚇や妨害などの行動を行います。海上民兵は、中国の国家安全保障戦略の一環として、灰色地帯作戦(グレーゾーン作戦)と呼ばれる、武力衝突に至らない限界までの挑発や圧力を行う作戦に重要な役割を果たしています。
海上民兵の起源は、1970年代に遡ります。当時、中国は南シナ海のパラセル諸島(中国名:西沙群島)やスプラトリー諸島(中国名:南沙群島)に対する領有権を主張し始めました。しかし、これらの島々はベトナムやフィリピンなどの周辺国も領有権を主張しており、紛争が起こりました。中国は、人民解放軍や海警局だけではなく、漁民や船員などの民間人も動員して、これらの島々に対する実効支配を強化しようとしました。これが海上民兵の始まりです。
海上民兵は、中国共産党の指導下にあります。海上民兵は、地方政府や漁業協会などの組織を通じて、訓練や装備などの支援を受けます。海上民兵は、通常の漁船や商船に偽装して活動しますが、実際にはレーダーや無線などの高度な通信機器や衝角などの攻撃用具を備えています。海上民兵は、人民解放軍や海警局と連絡を取り合いながら、他国の漁船や軍艦に対して集団で接近したり、衝突したり、追跡したりすることで、領域内から追い出そうとします。また、海上民兵は、人工島や港湾施設などの建設や警備にも関与しています。
海上民兵は、中国が南シナ海や東シナ海で領有権を主張するために重要な手段です。海上民兵は、武力衝突に至らない限界まで他国を挑発し、事実上の支配権を確立しようとします。これは灰色地帯作戦(グレーゾーン作戦)と呼ばれる戦略です。灰色地帯作戦は、白色(平和)と黒色(戦争)の間の曖昧な領域で行われる作戦です。灰色地帯作戦では、武力行使は避けられますが、法的・政治的・心理的・経済的な圧力がかけられます。灰色地帯作戦の目的は、他国の抵抗意志を削ぎ、自国の利益を確保することです。
海上民兵は、中国の海洋進出の一環として、今後も活動を続けると予想されます。海上民兵は、中国の国家安全保障戦略において重要な役割を果たしています。海上民兵は、中国の領有権主張に対する他国の反発や国際社会の批判をかわしながら、中国の海洋権益を拡大しようとしています。海上民兵は、南シナ海や東シナ海だけでなく、インド洋や太平洋などの広い海域で活動する可能性があります。海上民兵は、中国の海洋大国化に向けて不可欠な存在です。