「赤字特養が6割超」介護施設倒産が過去最多に 人手不足やコスト増が原因

赤字の特養が6割超 介護施設倒産の背景と対策

高齢化社会の進展により、介護施設の需要は今後も増加していくことが予想される。しかし、近年では介護施設の倒産が相次いでおり、その背景にはさまざまな要因が存在する。



介護施設倒産の背景

介護施設倒産の背景として、以下の要因が挙げられる。

  • 人手不足

介護施設は、利用者の生活を支えるため、多くの人材を必要とする。しかし、介護職員の不足が深刻化しており、人件費の増加が経営を圧迫している。

  • コスト増

介護施設の運営には、人件費以外にも、食費や光熱費などのコストがかかる。近年では、物価高の影響でこれらのコストが増加しており、収益の圧迫につながっている。

  • 競争激化

介護施設の参入が拡大し、競争が激化している。そのため、価格競争に巻き込まれて、収益が低下するケースも少なくない。

  • コロナ禍の影響

コロナ禍の影響により、利用者の減少や感染対策へのコスト増などが生じた。

介護施設倒産の現状

東京商工リサーチの調査によると、2022年の介護事業者の倒産件数は143件と、過去最多を記録した。このうち、特養(特別養護老人ホーム)の倒産件数は74件で、全体の約半数を占めた。また、赤字の特養は6割を超えており、経営難が深刻化していることがうかがえる。

介護施設倒産の対策

介護施設倒産を防ぐためには、以下の対策が考えられる。

  • 人材確保の強化

介護職員の不足を解消するために、資格取得の支援や待遇改善などの施策を講じる必要がある。

  • コスト削減

食費や光熱費などのコスト削減を図り、収益の改善につなげる必要がある。

  • 競争の是正

価格競争の激化を抑制し、健全な競争環境を整備する必要がある。

  • コロナ禍の影響緩和

コロナ禍の影響を軽減するための支援策を講じる必要がある。

まとめ

介護施設倒産は、利用者や地域社会にとって大きな損失となる。介護施設の経営が安定して、高齢者が安心して暮らせる環境を整備していくことが重要である。

今後の展望

今後も高齢化社会の進展により、介護施設の需要は増加していくことが予想される。しかし、人手不足やコスト増などの課題は依然として深刻である。これらの課題を解決するためには、政府や自治体、民間企業が連携して、介護事業者の経営を支援していく必要がある。

介護職員のなり手がいない理由は、大きく分けて以下の3つが挙げられます。

  1. 仕事内容や労働条件が厳しい

介護職の仕事は、利用者の身体介助や生活支援など、肉体的にも精神的にも負担の大きい業務が多いです。また、シフト制で勤務時間が不規則なため、家庭やプライベートの時間を確保しにくいという課題もあります。

  1. 給与や待遇が他業種と比べて劣る

介護職の給与は、他の業種と比べて低い傾向にあります。また、夜勤や休日出勤などの手当も少ないため、収入面での魅力が乏しいという課題もあります。

  1. 介護職に対するイメージが悪い

介護職は、汚れ仕事や重労働が多いというイメージが根強く残っています。また、利用者や家族からのクレームに苦しむこともあるため、敬遠される傾向にあります。

これらの要因が複合的に絡み合うことで、介護職員のなり手不足が深刻化しています。

介護職員のなり手を増やすための対策

介護職員のなり手を増やすためには、以下の対策が考えられます。

  • 仕事内容や労働条件の改善

利用者の負担を軽減するための介護機器やシステムの導入、シフト制の見直しなどにより、仕事内容や労働条件を改善していく必要があります。

  • 給与や待遇の改善

介護職の給与や待遇を他業種と比べて引き上げることで、収入面での魅力を高める必要があります。

  • 介護職に対するイメージの改善

介護職の社会的地位の向上や、介護職員の活躍事例の紹介などにより、介護職に対するイメージを改善していく必要があります。

これらの対策を講じることで、介護職員のなり手不足を解消し、高齢者の安心・安全な生活を支える環境を整備していくことが重要です。

2022年4月から、日本では特定技能外国人の介護分野での受け入れが始まりました。

それまでは、介護職員として日本に就労できるのは、介護福祉士の資格を取得した外国人と、技能実習生に限られていました。

特定技能外国人の介護分野での受け入れ開始後、日本への介護要員の流入は増加傾向にあります。厚生労働省の調査によると、2023年3月末時点で、特定技能外国人の介護分野での在留者数は、1万1,718人となっています。これは、2022年3月末時点の6,817人から約66%増加した数字です。

特定技能外国人の介護要員の増加は、介護職員のなり手不足の解消に一定の成果を上げています。しかし、依然として介護職員の不足は深刻な状況にあり、さらなる対策が求められています。

特定技能外国人の介護要員の課題

特定技能外国人の介護要員の受け入れには、以下の課題があります。

  • 日本語能力の不足

介護職員として働くためには、日本語でコミュニケーションをとる能力が必要です。しかし、特定技能外国人の多くは、日本語能力が十分に備わっていないという課題があります。

  • 日本の介護制度や文化への理解不足

日本の介護制度や文化は、海外とは異なる部分が多くあります。そのため、特定技能外国人が日本の介護現場で働くためには、日本の介護制度や文化への理解を深める必要があります。

  • 職場環境の改善

介護職員のなり手不足を解消するためには、職場環境の改善も重要です。特定技能外国人が日本で働きやすい環境を整備するためには、給与や待遇の改善、仕事内容や労働条件の見直しなどが必要となります。

今後の展望

今後も高齢化社会の進展により、介護職員の需要は増加していくことが予想されます。そのため、特定技能外国人の介護要員の受け入れを拡大していくことが重要です。また、日本語能力の向上や日本の介護制度や文化への理解を深めるための教育・研修の充実など、特定技能外国人が日本で働きやすい環境を整備していくことも必要となります。

こうした取り組みを進めることで、介護職員のなり手不足を解消し、高齢者が安心・安全に暮らせる社会を実現していくことが期待されます。