老人性うつと認知症は、どちらも高齢者に多い精神疾患。違いや見分け方を解説

老人性うつと認知症の違い

老人性うつと認知症は、どちらも高齢者に多くみられる精神疾患です。しかし、両者は原因や症状、治療法などが異なるため、正しく理解しておくことが大切です。


老人性うつとは

老人性うつは、高齢者にみられるうつ病の一種です。抑うつ気分、意欲の低下、興味や喜びの喪失、不眠、食欲不振、集中力の低下、疲労感、自殺念慮などの症状が現れます。

老人性うつの原因は、脳内の神経伝達物質のバランスの乱れ、加齢による身体機能の低下、ストレス、病気、薬の副作用などと考えられています。

認知症とは

認知症は、脳の機能が低下することで、記憶力、理解力、判断力、判断力などの認知機能に障害が生じる疾患です。アルツハイマー認知症レビー小体型認知症、脳血管性認知症などが代表的な認知症です。

認知症の原因は、アルツハイマー認知症では脳内にアミロイドβやタウというたんぱく質が蓄積すること、レビー小体型認知症では脳内にレビー小体というたんぱく質の塊ができること、脳血管性認知症では脳の血管障害によって脳の細胞が死ぬことなどが考えられています。

老人性うつと認知症の違い

老人性うつと認知症の違いは、以下の表の通りです。

項目 老人性うつ 認知症
原因 脳内の神経伝達物質のバランスの乱れ、加齢による身体機能の低下、ストレス、病気、薬の副作用など アルツハイマー認知症では脳内にアミロイドβやタウというたんぱく質が蓄積すること、レビー小体型認知症では脳内にレビー小体というたんぱく質の塊ができること、脳血管性認知症では脳の血管障害によって脳の細胞が死ぬことなど
症状 抑うつ気分、意欲の低下、興味や喜びの喪失、不眠、食欲不振、集中力の低下、疲労感、自殺念慮など 記憶障害、判断力や理解力の低下、見当識障害、幻覚や妄想など
進行速度 比較的短い期間に症状が現れる 徐々に症状が進行する
治療法 抗うつ薬認知行動療法など 原因によって異なるが、抗認知症薬、リハビリテーションなど

老人性うつと認知症の鑑別診断

老人性うつと認知症は、症状が似ているため、鑑別診断が難しい場合があります。しかし、以下の症状は認知症を疑う指標となるため、注意が必要です。

  • 物忘れが徐々に進行し、日常生活に支障をきたす
  • 見当識障害(場所や時間、自分の名前などがわからなくなる)
  • 幻覚や妄想
  • 性格や行動の変化

また、認知症の方は、老人性うつを合併していることも多いため、両方の症状が現れている場合は、両方の治療を行う必要があります。

老人性うつと認知症の予防

老人性うつと認知症は、どちらも予防が難しい疾患ですが、以下のことに気をつけることで、発症を遅らせたり、軽減したりできる可能性があります。

  • 健康的な生活習慣を心がける(バランスの良い食事、適度な運動、十分な睡眠)
  • ストレスを溜め込まない
  • 脳を活性化させる(読書、音楽、ゲーム、会話など)
  • 定期的に健康診断を受ける

高齢者の方は、上記のような症状が現れた場合は、早めに医療機関を受診し、適切な治療を受けることが大切です。