生成AI規制中国:習政権の動きと国際的影響に迫る

2023年8月15日、中国政府は、文章や画像などを自動生成する人工知能(AI)に関する規制を発表しました。これは「生成AIサービス管理暫定規則」と呼ばれる新しい規制で、国家インターネット情報弁公室や公安省など政府の7つの部門が関与しました。この規制は、世界的に生成AIに関する規制が議論される中、中国が先行して動いたものです。中国政府は、共産党政権の安定を維持し、国内企業の発展を支援するという観点から、生成AIの使用と配信を制限する措置を取りました。

この新しい規制によれば、生成AIの提供者や利用者には「社会主義核心価値観」の尊重が求められます。また、「国家政権転覆を扇動し、社会主義制度を打倒し、国家の安全や利益に危害を加える内容を生成してはならない」という点が強調されています。この規制は、共産党政権にとって都合の悪い情報や意見を拡散させないためのものとも解釈されています。


規則の一環として、「関連する国際ルールの制定に関与する」という文言も含まれており、中国が有利な国際的なルールの形成を推進しようとしている可能性も示唆されています。中国外務省の報道官は以前の記者会見で、世界的な協力に積極的に関与する姿勢を示しており、国際的な枠組みでの協力を模索する姿勢が伺えます。

この新規制は、海外の生成AIサービスにも適用される予定で、規則に違反する場合、中国の国家インターネット部門が適切な対策を講じるよう関連機関に通知することが規定されています。米国の「対話型AIチャットGPT」の利用は既に中国で制限されており、このような措置の法的根拠を整備する意図が明確です。中国は以前から、独自のネット検閲システム「グレート・ファイアウォール(電子版・万里の長城)」を導入しており、生成AIに対する規制もその一環として位置付けられています。

中国政府の背後には、国内市場を保護し、国内企業の成長を支援するという狙いもあります。中国の主要なIT企業である百度やアリババ集団なども、生成AIに関連する事業へ進出しており、中国AI産業の中核となっています。中国国内のAI産業は、約10兆円に相当する5000億元以上の市場規模を持ち、4300以上の企業が関与しています。また、中国は軍事分野での生成AIの利用も検討しており、規制はその一環としても捉えられています。