ネット金融業界の規制強化:アント・グループ罰金の背後にある要因

2021年7月7日夜、中国のアリババグループ傘下の金融会社であるアント・グループに対して、巨額の罰金処分が確定しました。この罰金額は71億2,300万元(約1,400億円)に上ります。


中国人民銀行(中国の中央銀行)が発表した文書によれば、アント・グループは金融消費者保護、銀行保険業務、決済業務、ファンド販売業務などにおいて違反行為を行ったとされています。これにより、同社は金融業務における規制違反に関して罰金を科されることとなりました。

アント・グループはかつて、2020年11月に上海と香港の両取引所での重複上場計画を進めていましたが、この計画は突如として取りやめられました。この背景には、中国当局の会議において、フィンテック(金融技術)分野の監督・規制強化が議題となり、インターネット企業の金融業務への厳しい監視が強まったことが挙げられます。これにより、アント・グループは逆風にさらされ、計画が頓挫する結果となりました。

その後、中国人民銀行は2020年12月にアント・グループに対して、組織のガバナンス体制の不備などを指摘する行政指導を行いました。アント・グループはこれに応じて、業務改善計画を策定しました。具体的には、金融事業の行政監督を受けること、決済業務の正常化(他の金融サービスとの不当な連携停止)、個人情報保護の強化などが盛り込まれました。

この罰金処分は、ネット金融業界における規制強化の一環として捉えられます。中国政府はこれまで「野放し」状態であったネット金融業界を、政府の監督の下で規範化する強い姿勢を示しています。この動きには、「管理しないと政府が支配されてしまう」という危機感も反映されていると言えるでしょう。

 

中国政府がこれまでネット金融業界をある程度「野放し」の状態にしてきた背景には、いくつかの要因が絡んでいます。

1. **イノベーションと成長の促進**: 中国は急速な経済成長を遂げており、新たな技術やビジネスモデルの導入を奨励してきました。ネット金融業界もその一環として捉えられ、イノベーションの場として成長を促進するため、一定の自由な状態を保ってきた面があります。

2. **金融包摂の拡大**: 中国政府は、経済の発展とともに金融包摂(金融サービスへのアクセス拡大)を進めることを重視してきました。ネット金融業界は、従来の金融機関に比べて新たな層に金融サービスを提供する手段として期待され、これを後押しする側面もありました。

3. **競争と創業の機会**: ネット金融業界の成長により、多くの新興企業が登場し、競争が活発化しました。これにより、多くの起業家が新しいビジネスモデルを試し、成長の機会を見出すことができました。

4. **規制の追いつきにくさ**: ネット金融業界は急速に進化するテクノロジーに基づいており、従来の金融規制が追いつきにくい側面もありました。新しい金融サービスやテクノロジーが出現するたびに、それに対応する規制を策定するのは困難でした。

しかしながら、近年ではネット金融業界においても規模や影響力が増大し、一部の企業が市場において優越的な地位を築いていることが問題とされるようになりました。特に金融安定性や消費者保護の観点から、規制の強化が求められるようになりました。2020年代に入り、中国政府はネット金融業界の規制を強化し、違法行為や規制違反を是正する方針を打ち出しました。