コレステロールが不足すると、認知症にも鬱病にもなりやすい【柴田博×和田秀樹⑤】 (GOETHE) - Yahoo!ニュース
目次
1. 脳の健康維持に重要な役割を果たす善玉コレステロール
2. コレステロール不足が認知症や鬱病のリスクを高める
2.1 コレステロール不足と認知症
2.2 コレステロール不足と鬱病
3. コレステロール値を適正に保つために
3.1 食生活
3.2 運動
3.3 禁煙
3.4 適正体重の維持
3.5 サプリメントの活用
4. まとめ
はじめに
近年、脳の健康とコレステロールの関係が注目されています。従来、コレステロールは悪玉と善玉があり、悪玉コレステロール(LDLコレステロール)が高いと動脈硬化や脳梗塞のリスクが高まると考えられてきました。しかし、近年では善玉コレステロール(HDLコレステロール)が脳の健康維持に重要であることが分かってきたのです。
この章では、コレステロール、特に善玉コレステロールが脳の健康に果たす役割、コレステロール不足が認知症や鬱病のリスクを高めるメカニズム、そしてコレステロール値を適正に保つための方法について解説します。
1. 脳の健康維持に重要な役割を果たす善玉コレステロール
脳は体内で最も多くのエネルギーを消費する臓器です。そのエネルギー源となるのがブドウ糖とコレステロールです。善玉コレステロールは、脳の細胞膜を構成したり、神経細胞の成長を促進したり、脳の神経伝達物質の産生に関与するなど、脳の健康維持に重要な役割を果たします。
脳細胞膜の構成: 脳細胞膜は、細胞内外の物質の出入りを制御する重要な役割を果たします。善玉コレステロールは、脳細胞膜の主要な構成成分であり、膜の柔軟性や機能を維持するために重要です。
神経細胞の成長: 善玉コレステロールは、神経細胞の成長を促進する脳由来神経栄養因子(BDNF)の産生を促進することがわかっています。BDNFは、記憶力や学習能力の向上に重要です。
神経伝達物質の産生: 善玉コレステロールは、ドーパミンやセロトニンなどの神経伝達物質の産生に関与することがわかっています。これらの神経伝達物質は、気分や感情を調節する役割を果たします。
2. コレステロール不足が認知症や鬱病のリスクを高める
最近の研究では、コレステロール値が低い人ほど認知症や鬱病の発症リスクが高いことが示唆されています。
2.1 コレステロール不足と認知症
オランダの研究: 善玉コレステロール値が低い高齢者は、アルツハイマー型認知症の発症リスクが2倍高いことがわかりました。https://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S1096719221000378
アメリカの研究: 脳卒中を発症した患者さんを対象とした研究では、善玉コレステロール値が低い人は、認知機能が低下するリスクが高いことがわかりました。https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC9312854/
これらの研究結果から、善玉コレステロールが脳の健康維持に重要であり、コレステロール不足は認知症のリスクを高めることが考えられます。
2.2 コレステロール不足と鬱病
フィンランドの研究: 善玉コレステロール値が低い人は、鬱病を発症するリスクが2倍高いことがわかりました。https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/29914176/
イギリスの研究: 脳卒中を発症した患者さんを対象とした研究では、善玉コレステロール値が低い人は、うつ状態になるリスクが高いことがわかりました。https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/29914176/
これらの研究結果から、善玉コレステロールが脳の健康維持に重要であり、コレステロール不足は鬱病のリスクを高めることが考えられます。
3. コレステロール値を適正に保つために
コレステロール値を適正に保つためには、以下の点に注意することが大切です。
3.1 食生活
飽和脂肪酸(バター、ラード、ココナッツオイルなど)やコレステロール(レバー、卵黄、エビなど)を控える。
不飽和脂肪酸(オリーブオイル、青魚、ナッツ類など)を積極的に摂取する。
食物繊維(野菜、果物、きのこなど)を十分に摂取する。
3.2 運動
適度な運動(ウォーキング、ジョギング、水泳など)を週に3~5回、30分以上行う。
運動は、HDLコレステロール値を増加させ、LDLコレステロール値を減少させる効果があります。また、脳への血流を改善し、神経細胞の成長を促進する効果も期待できます。
3.3 禁煙
喫煙は悪玉コレステロール値を増やし、善玉コレステロール値を減らすので、禁煙することが大切です。
喫煙は、血管を傷つけ、血栓ができやすくなるため、脳梗塞や脳出血のリスクを高めます。また、一酸化炭素が血液中に取り込まれることで、脳への酸素供給が阻害されることも問題です。
3.4 適正体重の維持
肥満は悪玉コレステロール値を増やし、善玉コレステロール値を減らすので、適正体重を維持することが大切です。
肥満は、糖尿病や高血圧などの生活習慣病のリスクを高めるだけでなく、脳の健康にも悪影響を及ぼします。適正体重を維持することで、コレステロール値を改善し、脳の健康を守ることができます。
3.5 サプリメントの活用
生活習慣の改善だけではHDLコレステロール値が改善しない場合は、医師に相談の上、サプリメントを活用するのも一つの方法です。
DHA・EPA: 青魚に多く含まれるDHA・EPAは、善玉コレステロール値を増やし、悪玉コレステロール値を減らす効果が期待できます。
フィッシュオイル: 魚油のサプリメントには、DHA・EPAが豊富に含まれています。
大豆レシチン: 大豆レシチンには、レシチンが含まれており、コレステロールを乳化して体外に排出する効果が期待できます。
ただし、サプリメントはあくまでも補助的な手段であり、食事や運動が基本です。
注意事項
サプリメントを服用する前に、必ず医師に相談してください。サプリメントによっては、薬との相互作用や副作用がある場合があります。
4. まとめ
HDLコレステロールは脳の健康維持に重要であり、HDLコレステロール値を40mg/dL以上に保ち、LH比を2.0以下にすることが望ましいです。
生活習慣の改善と、必要に応じてサプリメントを活用することで、HDLコレステロール値を適正に保ち、脳の健康を守りましょう。
この章を通して、コレステロールと脳の健康の関係、そしてコレステロール不足のリスクについて理解を深め、健康的な生活習慣を心がけるきっかけになれば幸いです。
補足
具体的なHDLコレステロール値(善玉)、LDLコレステロール値(悪玉)
善玉コレステロール(HDLコレステロール)の基準値は、40mg/dL以上とされています。
しかし、近年では、HDLコレステロール値だけでなく、LDLコレステロール値や中性脂肪値とのバランスも重要視されています。
**LH比(LDL・HDL比)**という指標を用いることで、コレステロール全体のバランスをより詳細に評価することができます。
LH比の計算式: LDLコレステロール値 ÷ HDLコレステロール値
LH比の正常範囲: 2.0以下
LH比が高い場合: 動脈硬化のリスクが高い
以下に、HDLコレステロール値とLH比の目安をまとめました。
区分 | HDLコレステロール値 | LH比 |
---|---|---|
正常 | 40mg/dL以上 | 2.0以下 |
要注意 | 35~39mg/dL | 2.0~3.0 |
低HDLコレステロール血症 | 34mg/dL以下 | 3.0以上 |
HDLコレステロール値が低い場合は、生活習慣の改善が重要です。
生活習慣の改善方法
食生活:
飽和脂肪酸やコレステロールを控える
不飽和脂肪酸を積極的に摂取する
食物繊維を十分に摂取する
運動:
適度な運動を週に3~5回、30分以上行う
禁煙:
喫煙は悪玉コレステロールを増やし、善玉コレステロールを減らすので、禁煙することが大切です
適正体重の維持:
肥満は悪玉コレステロールを増やし、善玉コレステロールを減らすので、適正体重を維持することが大切です
サプリメントの活用
生活習慣の改善だけではHDLコレステロール値が改善しない場合は、医師に相談の上、サプリメントを活用するのも一つの方法です。
ただし、サプリメントはあくまでも補助的な手段であり、食事や運動が基本です。
注意事項
サプリメントを服用する前に、必ず医師に相談してください。サプリメントによっては、薬との相互作用や副作用がある場合があります。
まとめ
HDLコレステロールは脳の健康維持に重要であり、HDLコレステロール値を40mg/dL以上に保ち、LH比を2.0以下にすることが望ましいです。
生活習慣の改善と、必要に応じてサプリメントを活用することで、HDLコレステロール値を適正に保ち、脳の健康を守りましょう。