遺伝子組み合わせ得点化で、疾患や体質のリスクを予測する

遺伝子組み合わせ得点化とは

遺伝子組み合わせ得点化(polygenic scoring)とは、複数の遺伝子(ポリジェン)の組み合わせを数値化して、個人の疾患や体質などのリスクを予測する方法である。


従来の遺伝子解析では、特定の疾患や体質と関連する遺伝子座(single nucleotide polymorphism、SNP)を特定し、その遺伝子座の型(A/A、A/G、G/Gなど)を調べることで、疾患や体質のリスクを予測していた。しかし、これらの遺伝子座は疾患や体質のリスクに影響を与える要因の一部に過ぎず、単独では十分な予測精度が得られなかった。

遺伝子組み合わせ得点化では、疾患や体質と関連する複数の遺伝子座の組み合わせを数値化し、その数値に基づいてリスクを予測する。これにより、従来の遺伝子解析よりも高い予測精度が得られるようになった。

遺伝子組み合わせ得点化の技術

遺伝子組み合わせ得点化を行うには、まず、疾患や体質と関連する遺伝子座を特定する必要がある。これは、ゲノムワイド関連解析(GWAS)と呼ばれる手法を用いて行われる。GWASでは、疾患や体質の発症者と発症していない人々のゲノムを比較し、発症者と発症していない人に差異のある遺伝子座を特定する。

遺伝子座が特定できたら、その遺伝子座の型に基づいて、各個人の遺伝子得点を算出する。遺伝子得点は、遺伝子座の型の頻度や、その遺伝子座が疾患や体質のリスクにどの程度影響を与えるかなどの情報をもとに算出される。

遺伝子組み合わせ得点化の応用

遺伝子組み合わせ得点化は、さまざまな疾患や体質の予測に応用されている。例えば、糖尿病、高血圧、心臓病などの生活習慣病や、がん、アルツハイマー病などの遺伝性疾患、さらには、IQ、性格、学業成績などの個人の特性まで、さまざまな疾患や体質のリスクを予測することができる。

遺伝子組み合わせ得点化は、疾病の早期発見や予防、治療法の開発など、さまざまな医療分野で活用が期待されている。また、教育、就職、保険など、社会のさまざまな場面でも活用される可能性もある。

遺伝子組み合わせ得点化の課題

遺伝子組み合わせ得点化には、いくつかの課題もある。

1つ目の課題は、遺伝子組み合わせ得点の予測精度が疾患や体質によって異なる点である。例えば、糖尿病や高血圧などの生活習慣病の予測精度は比較的高いが、がんやアルツハイマー病などの遺伝性疾患の予測精度は低い。

2つ目の課題は、遺伝子組み合わせ得点が個人の運命を決定してしまうのではないかという懸念である。遺伝子組み合わせ得点に基づいて、個人の能力や将来の可能性を予測することが可能になれば、差別や偏見につながる可能性がある。

遺伝子組み合わせ得点化の展望

遺伝子組み合わせ得点化は、まだ発展途上にある技術であるが、今後、さまざまな分野で活用されていくと考えられる。

疾病の早期発見や予防などの医療分野では、遺伝子組み合わせ得点を用いることで、より効果的な治療や予防策を講じることが可能になる。また、教育や就職、保険などの社会のさまざまな場面でも、遺伝子組み合わせ得点を用いることで、個人の特性や能力をより適切に評価することが可能になる。

遺伝子組み合わせ得点化がどのように発展していくのか、今後の動向が注目される。

遺伝子組み合わせ得点化の倫理

遺伝子組み合わせ得点化は、個人の将来や人生に大きな影響を与える可能性があることから、倫理的な配慮が求められる。

遺伝子組み合わせ得点は、あくまでもリスクの予測であり、必ずしもその通りになるわけではない。そのため、遺伝子組み合わせ得点を過信し、不当な差別や偏見につながるようなことは避けなければならない。

例えば、遺伝子組み合わせ得点に基づいて、特定の疾患のリスクが高いと判断された人が、保険や就職などで不利な扱いを受ける可能性がある。また、遺伝子組み合わせ得点に基づいて、特定の能力や特性が高いと判断された人が、差別や偏見の対象となる可能性がある。

遺伝子組み合わせ得点の活用においては、個人のプライバシーの保護にも配慮しなければならない。遺伝子情報は、個人のアイデンティティを特定する重要な情報であり、不正に取得や利用されることのないよう、適切な保護措置を講じなければならない。

具体的には、以下の点に配慮することが重要である。

  • 遺伝子組み合わせ得点の算出に用いられる遺伝子情報は、個人の同意を得た上で取得する。
  • 遺伝子組み合わせ得点は、本人の同意なしに第三者に提供しない。
  • 遺伝子組み合わせ得点は、本人のプライバシーに配慮した形で利用し、本人の同意なく不当な差別や偏見につながるようなことはしない。

遺伝子組み合わせ得点は、個人の健康や生活を向上させる可能性を秘めた技術である。しかし、その活用にあたっては、倫理的な配慮を欠くことのないよう、十分な検討が必要である。

以下に、遺伝子組み合わせ得点化の倫理的な配慮に関する具体的な例を示す。

  • 不当な差別や偏見の防止

遺伝子組み合わせ得点に基づいて、特定の疾患や体質のリスクが高いと判断された人が、保険や就職などで不利な扱いを受けることのないよう、注意が必要である。例えば、遺伝子組み合わせ得点に基づいて保険料を決める際には、本人の同意を得て、その遺伝子組み合わせ得点が保険料にどの程度影響を与えるかを明確にする必要がある。また、就職においては、遺伝子組み合わせ得点に基づいて採用や昇進の判断をすることは避けるべきである。

  • 個人のプライバシーの保護

遺伝子情報は、個人のアイデンティティを特定する重要な情報であり、不正に取得や利用されることのないよう、適切な保護措置を講じなければならない。例えば、遺伝子組み合わせ得点の算出に用いられる遺伝子情報は、個人の同意を得た上で取得し、適切なセキュリティ対策を講じて保管する必要がある。また、遺伝子組み合わせ得点は、本人の同意なしに第三者に提供することは避けるべきである。

  • 遺伝子情報の利用目的の明確化

遺伝子組み合わせ得点は、さまざまな目的に活用される可能性がある。そのため、遺伝子情報の利用目的を明確にし、その目的に沿った形でのみ利用することが重要である。例えば、疾病の早期発見や予防などの医療目的で利用する場合、その遺伝子情報は、本人の同意なく他の目的に利用してはならない。

遺伝子組み合わせ得点化は、まだ発展途上にある技術であるが、今後、さまざまな分野で活用されていくと考えられる。その活用にあたっては、倫理的な配慮を欠くことのないよう、十分な検討が必要である。