刑事訴訟法第213条 だれでも逮捕可能?逮捕の要件と誤認逮捕のリスク

刑事訴訟法第213条 だれでも逮捕可能

刑事訴訟法第213条は、現行犯人は、何人でも、逮捕状なくしてこれを逮捕することができる、と定めています。この条文は、一般人でも現行犯人を逮捕することができることを規定するものです。


現行犯とは

現行犯とは、現に罪を行い、または現に罪を行い終わった者をいいます。さらに、刑事訴訟法第212条2項の定める一定の状況下で罪を行い終わって間がないと明らかに認められる者も現行犯人とみなされます(準現行犯人)。

具体的には、以下の場合に現行犯逮捕が可能です。

  • 現に犯罪行為を行っている場合
  • 犯罪行為を行った直後で、まだ逃走していない場合
  • 犯罪行為を行った直後に、逃走の途中で、まだ逃走の意思が明らかな場合

逮捕の要件

現行犯逮捕を行うためには、以下の要件を満たす必要があります。

  • 現行犯人であることを認識していること
  • 逮捕の必要性があること

現行犯人であることを認識していることは、逮捕を行う者の主観的な認識で足ります。逮捕の必要性とは、現行犯人を逃走させないため、または証拠を隠滅させないために逮捕を行う必要があることをいいます。

逮捕の流れ

現行犯逮捕を行う場合には、以下の流れで手続きを行います。

  1. 現行犯人であることを告知する
  2. 逮捕の理由を告知する
  3. 身柄を拘束する
  4. 警察署に引き渡す

現行犯人であることを告知する際には、逮捕する者の氏名、職務、逮捕する理由などを告げます。また、逮捕の理由を告知する際には、犯罪行為の具体的な内容などを告げます。

身柄を拘束する際には、手錠や足枷などを用いて、現行犯人の逃走を防止します。

警察署に引き渡す際には、現行犯逮捕の調書を作成し、署長に提出します。

現行犯逮捕の効力

現行犯逮捕は、裁判官が発布した逮捕状と同様の効力を有します。そのため、現行犯逮捕された者は、逮捕状なしで勾留や起訴を行うことができます。

現行犯逮捕の限界

現行犯逮捕は、犯罪の被害者や目撃者など、一般人でも行うことができるというメリットがあります。しかし、一方で、以下のような限界もあります。

  • 誤認逮捕の可能性が高い
  • 逮捕の必要性や適正性を判断することが難しい

誤認逮捕とは、現行犯人ではない者を逮捕してしまうことです。現行犯逮捕は、逮捕状なしで行うことができるため、誤認逮捕の可能性は高くなります。

逮捕の必要性や適正性を判断することが難しいとは、逮捕を行う際に、現行犯人を逃走させないため、または証拠を隠滅させないために逮捕を行う必要があるかどうかを判断することが難しいことをいいます。

現行犯逮捕の改善策

現行犯逮捕の限界を改善するためには、以下の対策が考えられます。

  • 現行犯逮捕の要件を明確化する
  • 誤認逮捕を防止するための教育や訓練を充実させる

現行犯逮捕の要件を明確化することで、誤認逮捕の可能性を減らすことができます。また、誤認逮捕を防止するための教育や訓練を充実させることで、逮捕の必要性や適正性を判断する能力を向上させることができます。

まとめ

刑事訴訟法第213条は、一般人でも現行犯人を逮捕することができることを規定しています。この条文は、犯罪の被害者や目撃者など、一般人でも犯罪の阻止に貢献できるようにするためのものです。しかし、誤認逮捕の可能性や、逮捕の必要性や適正性を判断することが難しいなどの限界もあります。これらの限界を改善するためには、現行犯逮捕の要件を明確化したり、誤認逮捕を防止するための教育や訓練を充実させたりすることが求められます。

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誤認逮捕の可能性が高い、逮捕の必要性や適正性を判断することが難しいについて

誤認逮捕の可能性が高い理由は、大きく分けて以下の2つが挙げられます。

  1. 証拠の不十分さ

逮捕の要件である「相当の理由」とは、犯罪を犯した疑いが「相当程度」あることを意味します。しかし、実際には、逮捕に至るまでの証拠が不十分なケースも少なくありません。例えば、目撃証言や被害者の供述が不安定なものであったり、物証が不明確であったりする場合です。このような場合、逮捕された本人は、実際には犯罪を犯していないにもかかわらず、逮捕されてしまう可能性があります。

  1. 捜査の不十分さ

逮捕の必要性や適正性を判断するためには、捜査によって十分な証拠を集めることが重要です。しかし、捜査に時間や人員が限られている場合、十分な証拠を集めることができず、誤認逮捕につながる可能性があります。例えば、捜査が急がれていたり、捜査員の経験や能力が不足していたりする場合です。

具体的な例としては、以下のようなケースが挙げられます。

  • 目撃証言や被害者の供述が不一致であったにもかかわらず、逮捕されたケース
  • 物証の鑑定結果が出ていないにもかかわらず、逮捕されたケース
  • 容疑者のアリバイが確認されていたにもかかわらず、逮捕されたケース
  • 捜査員が容疑者を特定するために、脅迫や暴力などの違法な手段を用いたケース

このようなケースでは、逮捕の必要性や適正性が十分に検討されていないため、誤認逮捕の可能性が高くなります。

また、逮捕の必要性や適正性を判断することが難しい理由としては、以下のような点が挙げられます。

  • 逮捕の判断は、捜査員の裁量に委ねられている部分が多い
  • 逮捕の基準は明確に定められていない
  • 逮捕の可否を判断する際に、捜査員の経験や能力が大きく影響する

逮捕は、被疑者の人権を制限する重大な措置であるため、慎重に判断されるべきものです。しかし、現状では、誤認逮捕の可能性を十分に排除できないという課題があります。

誤認逮捕を防止するためには、以下の対策が考えられます。

  • 逮捕の基準を明確に定める
  • 捜査員の裁量を制限する
  • 逮捕の可否を判断する際に、客観的な基準を用いる

また、国民一人ひとりが、誤認逮捕の可能性について理解し、疑問や不安があれば、警察や弁護士に相談するなど、適切に対応することが重要です。