生物学 ヒト科以外徹夜できないという驚きの事実!

生物学 ヒト科以外徹夜できないについて

 

ヒト科以外の動物がなぜ徹夜できないのかについてお話ししたいと思います。徹夜とは、一晩中眠らないことを指しますが、これは人間にとっては普通のことのように思えるかもしれません。しかし、実は人間は徹夜ができる数少ない動物の一つなのです。では、他の動物はどうして徹夜できないのでしょうか?


まず、動物の睡眠には大きく分けて二つのタイプがあります。一つはノンレム睡眠と呼ばれるもので、これは深い眠りの状態です。ノンレム睡眠中は、脳波が低くてゆっくりとしたものになります。もう一つはレム睡眠と呼ばれるもので、これは浅い眠りの状態です。レム睡眠中は、脳波が高くて速いものになります。レム睡眠は夢を見る時に起こると言われています。

動物はノンレム睡眠レム睡眠を交互に繰り返しながら眠りますが、その比率や時間は種類によって異なります。例えば、犬や猫は一日に約12時間から16時間ほど眠りますが、そのうち約20%から25%がレム睡眠です。一方、ゾウやキリンは一日に約4時間から6時間ほどしか眠りませんが、そのうち約10%以下がレム睡眠です。また、イルカやアザラシなどの海洋哺乳類は、片方の脳半球だけをノンレム睡眠に入れて、もう片方を覚醒させることができます。これは水中で呼吸する必要があるためです。

では、動物はなぜこれだけ違う睡眠パターンを持つのでしょうか?その理由は主に二つあります。一つはエネルギー消費の関係です。動物は体温を一定に保つためにエネルギーを消費しますが、睡眠中は体温を下げてエネルギー消費を抑えることができます。しかし、レム睡眠中は体温調節が失われるため、エネルギー消費が増えます。したがって、大きくて重い動物ほどレム睡眠の割合が少なくなります。逆に小さくて軽い動物ほどレム睡眠の割合が多くなります。

もう一つの理由は生存戦略の関係です。動物は自分の安全を確保するために様々な方法で対処しますが、その一つが睡眠パターンです。例えば、捕食者から逃れるために高速で走ることができる動物は、短時間でも深いノンレム睡眠に入ることができます。しかし、捕食者から逃れるために隠れることができる動物は、長時間でも浅いレム睡眠に入ることができます。また、社会的な動物は、仲間とのコミュニケーションや学習のためにレム睡眠を必要とします。逆に孤独な動物は、レム睡眠をあまり必要としません。

 

以上のように、動物の睡眠パターンは種類によって大きく異なりますが、それぞれに合った最適なものです。しかし、人間は例外的な存在です。人間は一日に約8時間ほど眠りますが、そのうち約25%がレム睡眠です。これは犬や猫と同じくらいの割合です。しかし、人間は大きくて重い動物であり、社会的な動物でもあります。つまり、エネルギー消費を抑える必要があるのにもかかわらず、レム睡眠を多く取る必要があるのです。これはどうしてでしょうか?

人間のレム睡眠の多さの理由は、脳の発達と関係しています。人間は他の動物よりも脳が大きくて複雑です。特に前頭葉と呼ばれる部分が発達しています。前頭葉は思考や判断や計画などの高次の機能を担っています。しかし、前頭葉はエネルギーを多く消費する部分でもあります。したがって、人間は前頭葉を休ませるためにレム睡眠を多く取る必要があるのです。レム睡眠中は、前頭葉の活動が低下し、夢を見ることで脳内の情報を整理したり記憶したりすることができます。

しかし、人間はレム睡眠だけではなく、ノンレム睡眠も必要です。ノンレム睡眠中は、身体や免疫系や内分泌系などの回復や修復が行われます。また、ノンレム睡眠中も脳内の情報を整理したり記憶したりすることができます。特に深いノンレム睡眠では、学習したことや経験したことを長期記憶に移すことができます。

つまり、人間はレム睡眠とノンレム睡眠のバランスを取ることで、脳と身体の両方を健康に保つことができるのです。しかし、このバランスを崩すとどうなるでしょうか?実は、人間は徹夜することでこのバランスを崩すことができます。徹夜するということは、一晩中眠らないことですが、これは自然界ではほとんどあり得ないことです。人間は太陽の光や暗さによって体内時計と呼ばれるリズムを持っています。体内時計は睡眠や覚醒だけではなく、体温やホルモン分泌や食欲など様々な生理現象に影響します。しかし、徹夜することで体内時計が乱れてしまいます。

徹夜することで起こる具体的な影響には、以下のようなものがあります。

- 脳の働きが低下する。徹夜すると、脳に必要なレム睡眠とノンレム睡眠が不足します。レム睡眠は記憶や学習に関係する脳の部分を活性化しますが、ノンレム睡眠は脳全体を休息させます。この二つの睡眠がバランスよくとれないと、脳の働きが低下し、集中力や判断力や創造力が減少します。また、記憶力や学習能力も低下し、翌日に覚えたことや学んだことを忘れやすくなります。


- 免疫力が低下する。徹夜すると、免疫系に関係するホルモンや細胞の働きが低下します。免疫系は、体を外部からの感染や病気から守る役割を果たしますが、徹夜することでその防御力が弱まります。その結果、風邪やインフルエンザなどの感染症にかかりやすくなったり、アレルギーや自己免疫疾患などの免疫異常を引き起こしたりする可能性が高まります。


- 代謝が乱れる。徹夜すると、血糖値やインスリンなどの代謝に関係するホルモンの分泌が乱れます。代謝は、食べ物をエネルギーに変えたり、余分なエネルギーを蓄えたりする過程ですが、徹夜することでそのバランスが崩れます。その結果、血糖値が上昇したり下降したりしやすくなったり、インスリン抵抗性が高まったりします。これらは、糖尿病や肥満などの生活習慣病のリスクを増加させます。


- 精神的な不調が起こる徹夜すると、気分や感情に関係するセロトニンドーパミンなどの神経伝達物質の分泌が乱れます。神経伝達物質は、脳内で情報伝達を行う化学物質ですが、徹夜することでその量や質が変化します。その結果、イライラや不安やうつなどの精神的な不調が起こりやすくなります。また、ストレスに対処する能力も低下し、日常生活に支障をきたすこともあります。

以上のように、徹夜することは脳や身体に様々な悪影響を及ぼします。徹夜は必要不可欠な場合もあるかもしれませんが、できるだけ避けるようにしましょう。そして、十分な睡眠時間を確保して、レム睡眠とノンレム睡眠のバランスを取るように心がけましょう。それが、健康的で快適な生活を送るための基本です。