介護施設の経営難、赤字の特養が6割超に達する背景と対策

赤字の特養が6割超について

 

特別養護老人ホーム(特養)は、高齢者の介護を必要とする方々に、住宅と介護サービスを提供する施設です。しかし、特養の運営は、人件費や設備費などの高いコストと、介護報酬や入居料などの低い収入の間で、厳しい経営状況にあります。実際に、厚生労働省の調査によると、2019年度における特養の経営状況は、全国の約6割が赤字であり、そのうち約4割が3年以上連続して赤字であることが分かりました。

このような赤字の特養が増えている背景には、以下のような要因が考えられます。

- 人口減少と高齢化による需要の変化
- 介護報酬の引き下げと介護保険制度の改正
- 人材不足と離職率の高さ
- コロナ禍による感染防止対策の負担

これらの要因は、相互に影響しあって、特養の経営を圧迫しています。例えば、人口減少と高齢化によって、特養に入居する対象者は減少し、かつ重度化しています。これによって、特養は空き部屋が増えて収入が減り、一方で介護スタッフの負担が増えてコストが上昇します。また、介護報酬の引き下げや介護保険制度の改正によって、特養は公的な支援を受けにくくなり、自己負担を増やす必要があります。しかし、自己負担を増やすと、入居者やその家族からの不満が高まります。さらに、人材不足や離職率の高さによって、特養は質の高い介護サービスを提供することが困難になります。そして、コロナ禍によって、特養は感染防止対策に多くの時間や資金を割く必要があります。


このようにして、赤字の特養は悪循環に陥っています。この状況を改善するためには、以下のような対策が必要です。

- 特養の多様化と柔軟化
- 介護報酬の見直しと介護保険制度の改革
- 人材確保と教育・研修
- コロナ禍への対応と支援

これらの対策は、国や地方自治体、事業者、入居者やその家族など、関係者全体で協力して実施する必要があります。特養は高齢者の生活を支える重要な施設です。赤字の特養が6割超という事実は、我々社会全体が直面する深刻な課題です。この課題を解決するためには、特養の経営を持続可能なものにすることが必要です。そのためには、特養の価値を正しく評価し、適切な支援を行うことが必要です。

 

人口減少と高齢化によって、特養に入居する対象者は本当に減少しているのでしょうか?

この質問に答えるためには、まず特養とは何かを明確にする必要があります。特養とは、特別養護老人ホームの略称で、要介護度が高く、自宅や介護施設での生活が困難な高齢者が入居する施設です。特養に入居するためには、市町村の認定を受ける必要があります。

では、人口減少と高齢化によって、特養に入居する対象者は本当に減少しているのでしょうか。一般的には、人口減少と高齢化は特養の需要を増加させると考えられます。なぜなら、人口減少は高齢者の割合を高めることになり、高齢化は要介護者の数を増やすことになるからです。しかし、実際のデータを見ると、この傾向は必ずしも当てはまらないことがわかります。

厚生労働省の統計によると、平成29年度(2017年度)の特養の入居者数は約54万人でした。これは平成28年度(2016年度)よりも約1万人減少しています。また、平成29年度の特養の入居待機者数は約38万人でした。これは平成28年度よりも約2万人減少しています。つまり、特養に入居する対象者は減少傾向にあると言えます。

では、なぜこのような現象が起こっているのでしょうか。その理由として考えられるのは以下の3つです。

1. 在宅介護や地域包括ケアシステムの充実
2. 要介護度の低下や健康寿命の延伸
3. 特養への入居意欲や期待の低下

まず、在宅介護や地域包括ケアシステムの充実についてです。政府は高齢者が自分らしく暮らせる社会を目指しており、在宅介護や地域包括ケアシステムを推進しています。在宅介護とは、自宅で介護サービスを受けることです。地域包括ケアシステムとは、医療・介護・予防・住まい・生活支援などを地域で連携して提供する仕組みです。これらの取り組みによって、高齢者が自宅や地域で安心して暮らせる環境が整備されており、特養への入居を必要としない高齢者が増えています。

次に、要介護度の低下や健康寿命の延伸についてです。要介護度とは、介護保険制度で高齢者の介護状態を評価する指標です。要介護度が高いほど、介護が必要な状態です。健康寿命とは、自分で日常生活を送ることができる期間のことです。健康寿命が長いほど、健康な状態です。厚生労働省の調査によると、平成29年度の高齢者の要介護度は平成22年度よりも低下しており、健康寿命は平成22年度よりも延伸しています。これは、高齢者の健康づくりや予防ケアの効果や医療技術の進歩などが影響していると考えられます。これらの結果によって、特養に入居する必要がない高齢者が増えています。

最後に、特養への入居意欲や期待の低下についてです。特養は高額な費用がかかる上に、入居者の自由やプライバシーが制限されることが多いです。また、特養のサービスや環境に対する不満や不安もあるでしょう。これらの理由から、高齢者は特養への入居を望まないか、あるいは避ける傾向があります。さらに、高齢者の家族や親族も特養への入居を勧めないか、あるいは反対する場合があります。これらの態度によって、特養に入居する対象者が減少しています。

以上のように、人口減少と高齢化によって、特養に入居する対象者は本当に減少していることがわかりました。しかし、これは必ずしも良いこととは言えません。なぜなら、特養に入居する必要がある高齢者が十分に受け入れられていない可能性があるからです。特養は最後の居場所であり、安心して余生を過ごせる場所であるべきです。そのためには、特養の費用やサービスや環境を改善し、高齢者や家族や社会のニーズに応えられるようにする必要があります。また、在宅介護や地域包括ケアシステムと連携し、高齢者が自分らしく暮らせる選択肢を増やす必要があります。人口減少と高齢化は日本社会に大きな課題を投げかけていますが、それを乗り越えていくためには、特養を含めた高齢者福祉の見直しと改革が必要です。