挑戦と調和:トランスジェンダー選手の女子カテゴリー参加がもたらす変革

トランスジェンダー選手の女子大会参加について

トランスジェンダー選手の女子大会参加について、最近様々な議論が巻き起こっています。一方では、トランスジェンダー選手は自分の性別に合わせたカテゴリーで競技する権利があると主張する声があります。他方では、トランスジェンダー選手は生まれつきの性別によって不公平な利点を持っていると反対する声があります。この問題は、スポーツの公平性や多様性、人権や差別など、さまざまな側面から考える必要があります。本稿では、トランスジェンダー選手の女子大会参加に関する現状や課題、そして今後の展望について、専門家の意見や事例をもとに分析していきます。

出典

https://news.yahoo.co.jp/articles/eb2a978a479435df2ebdf5bf4ff33c0e60c210d6/images/000

 


まず、トランスジェンダー選手とは何か、という基本的な定義から見ていきましょう。トランスジェンダーとは、生まれた時に割り当てられた性別(出生時性別)と自分が感じる性別(自認性別)が一致しない人のことを指します。トランスジェンダーには、男性から女性へ(MtF)、女性から男性へ(FtM)、どちらでもない・両方である・その他の性別である(ノンバイナリー)など、さまざまなタイプがあります。トランスジェンダー選手とは、自認性別に合わせて競技することを望むトランスジェンダーの人のことです。

トランスジェンダー選手が女子大会に参加する場合、どのような条件が必要でしょうか。国際オリンピック委員会IOC)は、2015年に新たなガイドラインを発表しました。それによると、

MtFの選手は以下の3つの条件を満たす必要があります。

- 出生時性別に基づく競技から少なくとも1年間離れていること


- 血中テストステロン値が10ナノモル/リットル以下であること


- その値を少なくとも1年間維持していること

 

これらの条件は、MtFの選手が女子カテゴリーで競技する際に生じる可能性のあるパフォーマンス差を最小限に抑えるために設定されたものです。

テストステロンは男性ホルモンの一種で、筋肉量や骨密度、酸素運搬能力などに影響を与えます。しかし、これらの条件は科学的に根拠が十分であるか、また倫理的に妥当であるかという点で議論があります。

一つ目の問題点は、テストステロン値がパフォーマンスに与える影響がどれだけ大きいかということです。IOCガイドラインでは、10ナノモル/リットル以下という基準を採用していますが、これは女性の平均値の約5倍に相当します。一方、男性の平均値は約29ナノモル/リットルです。

つまり、MtFの選手は男性よりもかなり低いテストステロン値に抑える必要がありますが、女性よりもかなり高いテストステロン値を持つことができます。これは、MtFの選手に不利益を与えるのではないかという懸念もありますが、逆に女性選手に対して不公平な利点を与えるのではないかという懸念もあります。

実際に、テストステロン値がパフォーマンスにどれだけ影響するかという科学的な証拠はまだ不十分であり、さまざまな要因が関係していることが指摘されています。

二つ目の問題点は、テストステロン値を測定する方法やタイミングについてです。血中テストステロン値は、時間帯や食事、運動、ストレスなどによって変動します。また、測定する機器や方法によっても誤差が生じる可能性があります。

さらに、トランスジェンダー選手はホルモン療法や性別適合手術などを受けることで、テストステロン値が変化することもあります。これらの要素を考慮すると、テストステロン値を一定の基準で管理することは困難であると言えます。

三つ目の問題点は、テストステロン値以外の性差についてです。トランスジェンダー選手は、出生時性別によって形成された身体的な特徴を持ち続ける場合があります。例えば、身長や体重、骨格や筋肉量、心肺機能や反応速度などです。これらの特徴は、競技種目によって有利に働くこともあれば不利に働くこともあります。しかし、これらの特徴を測定したり制限したりすることは現実的ではありませんし、トランスジェンダー選手の人権やプライバシーを侵害する恐れもあります。

以上のように、トランスジェンダー選手の女子大会参加に関する条件は、科学的にも倫理的にも完全ではないと言わざるを得ません。

しかし、これはトランスジェンダー選手の女子大会参加を否定する理由にはなりません。むしろ、この問題を解決するためには、トランスジェンダー選手の声やニーズを尊重し、女性選手や他の関係者と対話し、共存できる方法を探る必要があります。

トランスジェンダー選手の女子大会参加は、スポーツ界だけでなく社会全体にとって重要な課題です。トランスジェンダー選手は自分の性別に合わせて競技することで、自己実現や社会参加を果たすことができます。

一概に禁止すべきではない、議論していくべきという事かな。