身寄りがないおひとり様が遺産を有効に活用する方法とは?

身寄りのない人の遺産について

日本では、民法第959条において、身寄りがなく法定相続人がいない場合、死亡した人の財産は最終的に国庫に入ると定められています。身寄りとは、配偶者、子、親、兄弟姉妹、祖父母、孫、曾孫、ひ孫を指します。これらの親族に該当する人がいない場合は、相続人がいないとみなされます。

身寄りがなく相続人がいない場合、遺産はどのように処理されるのでしょうか。具体的な流れを以下に説明します。

遺産の相続人がいないなどの理由で国庫に入る財産額が、2021年度は647億円と過去最高でした。

  1. 死亡届の提出

まず、死亡した人の死亡届を役所に提出します。死亡届には、相続人がいないことを記載する必要があります。

  1. 遺産の調査

死亡届の提出後、家庭裁判所は、相続人がいないかどうかを調査します。調査の結果、相続人がいないことが確定すると、相続財産管理人が選任されます。

  1. 相続財産管理人の選任

相続財産管理人は、遺産の管理、処分、債権者の弁済等を行う役割を担います。相続財産管理人は、裁判所が選任する公的な機関である場合と、遺産の管理に適した者を相続人から選任する場合とがあります。

  1. 相続財産の処分

相続財産管理人は、遺産を処分して債権者の弁済を行います。債権者の弁済が完了したら、残余財産は国庫に帰属します。

身寄りがなく相続人がいない場合、遺産は国庫に帰属してしまい、故人の意思を尊重することができません。そのため、遺言書を残しておくことで、遺産を自分が望む人に譲ることができます。遺言書は、公正証書遺言、自筆証書遺言、秘密証書遺言の3種類があります。

公正証書遺言は、公証役場で作成する遺言書で、最も確実な方法です。自筆証書遺言は、自分で作成する遺言書で、手続きが簡単です。秘密証書遺言は、自分で作成する遺言書で、遺言書の内容を誰にも知られずに保管することができます。

身寄りがなくても、遺言書を残しておくことで、故人の意思を尊重し、遺産を有効に活用することができます。

身寄りがない人の遺産の課題

身寄りがなく相続人がいない場合、遺産が国庫に帰属してしまうという課題があります。国庫に帰属した遺産は、税金や社会保障費の財源として使われますが、故人の意思を尊重することができないという問題があります。

また、遺産が国庫に帰属すると、相続税の納税義務が発生する可能性があります。相続税は、相続開始から10年以内に納付する必要があります。しかし、身寄りがなく相続人がいない場合は、相続税の納付を誰が行うのかが問題となります。

これらの課題を解決するために、以下の対策が考えられます。

  • 遺言制度の活用を促進する

遺言制度を活用することで、故人の意思を尊重し、遺産を有効に活用することができます。そのため、遺言制度の活用を促進するための啓発活動を行うことが重要です。

  • 国庫帰属財産の活用を検討する

国庫に帰属した遺産は、税金や社会保障費の財源として使われていますが、より有効に活用するための検討が必要です。例えば、遺産を社会福祉環境保護などの公共事業に活用するなどの方法が考えられます。

相続税の納付義務者は、相続人です。しかし、身寄りがなく相続人がいない場合は、相続税の納付義務者が誰なのかが問題となります。そのため、相続税の納付義務者の明確化が必要です。

まとめ

身寄りがなく相続人がいない場合、遺産は国庫に帰属してしまいます。そのため、遺言書を残しておくことで、故人の意思を尊重し、遺産を有効に活用することが重要です。また、遺言制度の活用を促進するなどの対策により、身寄りがない人の遺産に関する課題を解決していくことが求められます。

身寄りがなく相続人がいる時

身寄りがなく、相続人がいても、相続放棄をした場合、貯金は最終的に国庫に帰属します。

民法第959条において、身寄りがなく法定相続人がいない場合、死亡した人の財産は最終的に国庫に入ると定められています。しかし、相続人がいても、相続放棄をした場合、相続人としての権利を放棄することになります。そのため、相続人がいないのと同じ扱いとなり、遺産は国庫に帰属します。

相続放棄とは、相続の権利を放棄する意思表示をすることをいいます。相続放棄をするには、家庭裁判所に対して、相続放棄の申述をする必要があります。相続放棄の申述は、相続開始を知ってから3か月以内に行う必要があります。

相続放棄をした場合、相続人としての権利だけでなく、義務もすべて放棄することになります。そのため、相続財産の債務や負債も相続放棄の対象となります。

身寄りがないおひとり様で、相続人がいる場合は、相続放棄をしない限り、貯金は相続人に相続されることになります。ただし、相続人が相続を拒否した場合、貯金は最終的に国庫に帰属することになります。

身寄りがないおひとり様が遺産を有効に活用するためにできること

身寄りがないおひとり様が遺産を有効に活用するためには、以下の対策が考えられます。

  • 遺言書を作成しておく

遺言書を作成しておくことで、故人の意思を尊重し、遺産を有効に活用することができます。遺言書には、相続人や遺産の分割方法などを記載することができます。

  • 生前贈与を行う

生前贈与とは、生きているうちに財産を贈与することです。生前贈与を行うことで、相続税の節税効果が期待できます。

公益法人に寄付することで、故人の意思を尊重し、社会貢献することができます。

身寄りがないおひとり様は、遺産をどのように活用するかを事前に考えておくことが大切です。

いずれにしても遺言書直ぐ作成しましょう。