中途採用で経歴詐称が発覚! 懲戒解雇はNG?5つのポイントで徹底解説

中途採用経歴詐称で懲戒解雇できないケースについて

 

中途採用経歴詐称で懲戒解雇できないケース

近年、中途採用における経歴詐称が問題視されています。経歴詐称は、企業と労働者間の信頼関係を損ない、企業に損害を与える可能性があります。しかし、経歴詐称が発覚した場合でも、必ずしも懲戒解雇が認められるわけではありません。


目次

1. 懲戒解雇が認められる場合
2. 懲戒解雇が認められない場合
3. 具体的な事例
4. 企業が取るべき対応
5. 弁護士への相談

 

中途採用経歴詐称で懲戒解雇できないケース

1. 懲戒解雇が認められる場合

中途採用における経歴詐称で懲戒解雇が認められるかどうかは、以下の要素を総合的に判断する必要があります。

1-1. 詐称内容の重大性

詐称内容が、職務遂行能力に 直接関係 するものであるか
詐称内容が、企業の 社会的信用 を損なうものであるか
詐称内容が、労働契約上の 義務違反 に該当するか

上記の点を踏まえ、詐称内容が 重大 であると判断された場合にのみ、懲戒解雇が認められる可能性が高くなります。

具体例

職務経歴書の職歴を詐称し、実際よりも高いスキルを有しているように見せかけていた
学歴を詐称し、実際よりも高い学歴を有しているように見せかけていた
資格を詐称し、実際よりも多くの資格を有しているように見せかけていた

1-2. 詐称の態様

詐称内容を 故意に 隠していたか
詐称内容を 認識しながら 黙っていたか
詐称が発覚後、 速やかに 事実を 申告 したか

上記の点を踏まえ、悪意や故意が認められるような 悪質な態様 であった場合、懲戒解雇が認められる可能性が高くなります。

具体例

面接や履歴書において、故意に経歴を詐称していた
経歴詐称が発覚しても、事実を認めずに虚偽の説明を続けていた
経歴詐称が発覚後も、改善しようとせず、企業に協力を拒否していた

1-3. 詐称による影響度

詐称内容によって、企業に 具体的な損害 が発生したか
詐称内容によって、業務の 円滑な遂行 に支障が出ているか
詐称内容によって、他の従業員との間に 信頼関係が損なわれた か

上記の点を踏まえ、詐称内容によって企業に 重大な影響 が出ていると判断された場合、懲戒解雇が認められる可能性が高くなります。

具体例

詐称した経歴に基づいて、不適切な職務に就かせてしまい、企業に損害を与えた
詐称した経歴に基づいて、重要なプロジェクトを担当させてしまい、業務の円滑な遂行を妨げた
詐称が発覚したことにより、他の従業員との間に不信感が生まれ、職場全体の士気が低下した

2. 懲戒解雇が認められない場合

2-1. 詐称内容の軽微性

詐称内容が 軽微 であり、職務遂行能力に 影響がない 場合は、懲戒解雇は認められない可能性があります。

具体例

職務経歴書の職歴に誤りがあったが、職務遂行能力には問題がない
学歴を詐称していたが、必要な知識やスキルは有している
資格を詐称していたが、実務経験で十分なスキルを身につけている

2-2. 詐称の態様

詐称内容を 誤解 していた場合や、速やかに 事実を 訂正 し 謝罪 した場合は、懲戒解雇は認められない可能性があります。

具体例

職務経歴書の職歴に誤りがあったが、誤解に基づくものであり、故意ではない
経歴詐称が発覚後すぐに事実を認め、謝罪し、訂正した
今後このようなことがないように、再発防止策を講じている

2-3. 詐称による影響度

詐称内容によって、企業に 実害 が発生していない場合や、軽微な影響 しか出ていない場合は、懲戒解雇は認められない可能性があります。

具体例

詐称した経歴に基づいて、多少の損害を与えたが、軽微なものであり、企業全体に大きな影響を与えていない
詐称した経歴に基づいて、業務に支障が出たが、すぐに対応することで問題を解決できた
詐称が発覚したことにより、他の従業員との間に多少の不信感が生まれたが、すぐに説明することで問題は解決できた

3. 具体的な事例

事例1

A社は、中途採用でエンジニアを採用しました。Aは、履歴書において、前職で5年間のJava開発経験があると詐称していました。しかし、実際にはJava開発経験は1年しかありませんでした。Aは、入社後すぐに配属されたプロジェクトで、Javaの知識不足により、大きなミスを犯してしまいました。Aのミスにより、A社は多額の損害を被り、プロジェクトも遅延しました。A社は、Aの経歴詐称が発覚し、重大な影響を与えたとして、Aを懲戒解雇しました。

この事例では、Aの経歴詐称内容は重大であり、故意で悪質な態様であったこと、また、AのミスによってA社に多額の損害が発生したことなどから、懲戒解雇が認められました。

事例2

B社は、中途採用で営業職を採用しました。Bは、履歴書において、前職で年間1000万円の売上を達成したと詐称していました。しかし、実際には年間500万円の売上しか達成していませんでした。Bは、入社後すぐに目標として年間1000万円の売上達成を課せられましたが、なかなか目標を達成することができませんでした。Bは、経歴詐称が発覚し、B社に損害を与えたとして、懲戒解雇されました。

この事例では、Bの経歴詐称内容は軽微であり、Bの売上達成能力には影響がないこと、また、Bの経歴詐称が発覚してもすぐに事実を認め、謝罪したことなどから、懲戒解雇は認められませんでした。

4. 企業が取るべき対応

中途採用における経歴詐称が発覚した場合、企業は以下の対応を取ることが重要です。

4-1. 事実関係の調査

まず、経歴詐称の内容が事実であるかどうかを調査する必要があります。調査には、本人への聞き取りや、前職への照会などが必要です。

4-2. 弁護士への相談

経歴詐称の内容が重大であると判断された場合は、弁護士に相談することをお勧めします。弁護士は、法律的なアドバイスや、懲戒解雇の手続きについてサポートすることができます。

4-3. 労働者との話し合い

調査結果に基づき、労働者と話し合いを行います。話し合いでは、経歴詐称の事実を確認し、謝罪を受ける必要があります。また、今後の対応について話し合う必要があります。

4-4. 懲戒処分

話し合いの結果、懲戒処分を行うことが決定した場合は、労働基準法に基づいて適切な手続きを行う必要があります。

4-5. 再発防止策

経歴詐称が再発しないように、再発防止策を講じる必要があります。再発防止策としては、採用時の面接や履歴書の確認を徹底すること、入社後の研修を充実させることなどが考えられます。

5. 弁護士への相談

中途採用における経歴詐称は、企業にとって大きな問題となる可能性があります。経歴詐称が発覚した場合、どのように対応すればよいのかわからない場合は、弁護士に相談することをお勧めします。弁護士は、法律的なアドバイスや、具体的な対応策についてサポートすることができます。

以下は、弁護士に相談すべき場合の例です。

経歴詐称の内容が重大かどうか判断がつかない場合
労働者との話し合いがうまくいかない場合
懲戒解雇の手続きについて不安がある場合
経歴詐称が再発しないように、具体的な再発防止策を講じたい場合

弁護士に相談することで、迅速かつ適切な対応をすることができ、企業の損害を最小限に抑えることができます。

まとめ

中途採用における経歴詐称は、企業にとって大きな問題となる可能性があります。企業は、経歴詐称が発覚した場合に適切に対応できるように、事前に準備しておくことが重要です。また、経歴詐称が再発しないように、再発防止策を講じることも重要です。

本稿が、中途採用における経歴詐称に関する理解を深める一助となれば幸いです。

 

補足

中途採用で経歴詐称の内容が10年を経過していた場合の懲戒解雇

中途採用で経歴詐称が発覚した場合、懲戒解雇が認められるかどうかは、様々な要素を総合的に判断する必要があります。経歴詐称の内容が10年を経過していた場合も、一概に懲戒解雇が認められないとは言えません。

10年経過による影響

経歴詐称の内容が10年を経過していた場合、以下の点が考慮されます。

詐称内容の重要性: 詐称内容が職務遂行能力に 直接関係 するものであったか、企業の 社会的信用 を損なうものであったか、労働契約上の 義務違反 に該当するか
詐称の態様: 詐称内容を 故意に 隠していたか、認識しながら 黙っていたか、詐称が発覚後、 速やかに 事実を 申告 したか
詐称による影響度: 詐称内容によって、企業に 具体的な損害 が発生したか、詐称内容によって、業務の 円滑な遂行 に支障が出ているか、詐称内容によって、他の従業員との間に 信頼関係が損なわれた か

これらの点を踏まえ、詐称内容が軽微であり、企業に重大な影響を与えていない と判断された場合、10年経過という事実が、懲戒解雇を認められない根拠となる可能性があります。

過去の判例

過去の判例では、経歴詐称の内容が10年以上経過していたにもかかわらず、懲戒解雇が認められたケースがあります。

例:

ある会社が、中途採用で営業職を採用しました。採用時に、応募者は前職で年間1億円の売上を達成したと詐称していました。しかし、実際には年間5000万円の売上しか達成していませんでした。入社後10年間、応募者は優秀な成績を収め、会社に貢献していました。しかし、入社から10年後に経歴詐称が発覚しました。会社は、応募者を懲戒解雇しました。

この判例では、経歴詐称の内容が重大であり、入社から10年経過していても、会社の信頼関係を損なうものであると判断されました。

しかし、10年経過が懲戒解雇を認められない根拠となるケースも存在します。

例:

ある会社が、中途採用で事務職を採用しました。採用時に、応募者は大学を卒業していると詐称していました。しかし、実際には大学を卒業していませんでした。入社後10年間、応募者は真面目に仕事をしており、会社に貢献していました。しかし、入社から10年後に経歴詐称が発覚しました。会社は、応募者を懲戒解雇しました。

この判例では、経歴詐称の内容が軽微であり、入社から10年経過していても、会社の信頼関係を損なうものではないと判断されました。

まとめ

中途採用で経歴詐称が発覚した場合、10年経過という事実が必ずしも懲戒解雇を認められない根拠となるわけではありません。詐称内容の重要性、詐称の態様、詐称による影響度 を総合的に判断する必要があります。

具体的な判断は、個々の事案によって異なるため、弁護士等に相談することをお勧めします。

以下は、弁護士に相談すべき場合の例です。

経歴詐称の内容が重大かどうか判断がつかない場合
労働者との話し合いがうまくいかない場合
懲戒解雇の手続きについて不安がある場合
経歴詐称が再発しないように、具体的な再発防止策を講じたい場合

弁護士に相談することで、迅速かつ適切な対応をすることができ、企業の損害を最小限に抑えることができます。