日本の再使用可能ロケット開発の現状と課題

日本の再使用可能ロケットについて

 

日本の再使用可能ロケット

 宇宙開発の新時代を切り開く:日本の再使用可能ロケット

近年、宇宙開発におけるコスト削減は重要な課題となっています。従来の使い捨てロケットでは、打ち上げ費用が非常に高額であり、衛星打ち上げの頻度や規模に制限が生じていました。

この課題を解決するために、欧米を中心に再使用可能ロケットの開発が進められています。日本もこの流れに遅れず、JAXAを中心に再使用可能ロケットの研究開発が進められています。

本記事では、日本の再使用可能ロケット開発の現状と課題、将来展望と可能性について解説します。また、日本の再使用可能ロケット開発が宇宙開発に与える影響、JAXAや民間企業の役割についても考察します。

再使用可能ロケットは、宇宙開発の新たな時代を切り開く革新的な技術です。本記事を通して、日本の再使用可能ロケット開発の現状と将来について理解を深め、今後の宇宙開発の進展に期待を寄せていただければ幸いです。


もくじ

日本の再使用可能ロケット
1. 概要

2. 日本の再使用可能ロケット開発状況

 2.1. RVT(Reusable Vehicle Technology)

 2.2. CALLISTO(CAnary Advanced Launch System for LOrbiter Testbed and In-situ Space Transportation)

3. 日本の再使用可能ロケット開発の課題

 3.1. 技術開発の加速
 3.2. 開発費用の調達
 3.3. 安全性の確保
 3.4. 規制緩和
4. 日本の再使用可能ロケット開発の将来

 

日本の再使用可能ロケット

1. 概要

近年、宇宙開発においてコスト削減は重要な課題となっています。従来の使い捨てロケットでは、打ち上げ費用が非常に高額であり、衛星打ち上げの頻度や規模に制限が生じていました。

この課題を解決するために、欧米を中心に再使用可能ロケットの開発が進められています。再使用可能ロケットは、一部または全部を回収・再利用することで、打ち上げ費用を大幅に削減することができます。

日本もこの流れに遅れず、JAXAを中心に再使用可能ロケットの研究開発が進められています。JAXAは、小型のRVTとH3ロケットの1段目を再利用するCALLISTOという2つのプロジェクトを進めています。

これらのプロジェクトが成功すれば、日本の宇宙開発は大きく進展し、より頻繁な衛星打ち上げや宇宙旅行の実現が可能になることが期待されています。

2. 日本の再使用可能ロケット開発状況

JAXAは、2つの再使用可能ロケット開発プロジェクトを進めています。 

 2.1. RVT(Reusable Vehicle Technology)

概要

RVTは、JAXAが開発する小型で安価な再使用ロケット実験機です。1998年から開発が進められており、これまで11回の飛行試験を実施しています。2023年3月には、高度100kmまで飛行し、パラシュートで着陸することに成功しました。

https://www.jaxa.jp/press/2003/11/20031112_rvt_j.html


目的

RVTの開発目的は以下の通りです。

再使用可能ロケット技術の確立
宇宙輸送コストの低減
将来の再使用可能ロケット開発への基盤技術の確立
機体

RVTは、全長約8.5m、直径約3.5mの機体です。液体酸素と液体水素を燃料とするロケットエンジンを搭載しており、最大高度100kmまで飛行することができます。

試験結果

RVTは、これまで11回の飛行試験を実施しており、以下の技術を検証してきました。

垂直離陸・垂直着陸
自動制御
熱防護
パラシュート着陸

2023年3月には、高度100kmまで飛行し、パラシュートで着陸することに成功しました。これは、日本の再使用可能ロケット開発において大きな成果となりました。

今後の展望

JAXAは、RVTの飛行試験を継続し、再使用可能ロケット技術の確立を目指しています。将来的には、RVTの技術を活かして、より大型で高度な再使用可能ロケットの開発を進めていく予定です。

 2.2. CALLISTO(CAnary Advanced Launch System for LOrbiter Testbed and In-situ Space Transportation)

CALLISTOは、欧州宇宙機関ESA)とドイツ航空宇宙センター(DLR)との共同プロジェクトで、H3ロケットの1段目を再使用可能にする技術を開発することを目的としています。

「回収・再利用」時代にH3ロケットは生き残れるか | 日経クロステック(xTECH)


1. 概要

CALLISTOは、H3ロケットの1段目を垂直離陸垂直着陸(VTVL)させる技術を開発するプロジェクトです。H3ロケットの1段目は、直径約4m、全長約30m、重量約130tの大型ロケットです。

2. 技術開発

CALLISTOプロジェクトでは、以下の技術開発を進めています。

VTVL技術
ロケットエンジンの再着火技術
熱防護技術
制御システム
着陸システム

3. スケジュール

CALLISTOプロジェクトは、2027年の初飛行を目指しています。

4. 期待される効果

CALLISTOプロジェクトが成功すれば、以下の効果が期待されます。

宇宙輸送コストの大幅な削減
衛星打ち上げ頻度の増加
宇宙旅行の実現
関連情報
JAXA - H3ロケット
ESA - CALLISTO
DLR - CALLISTO

3. 日本の再使用可能ロケット開発の課題

日本の再使用可能ロケット開発は、欧米諸国と比べるとまだ発展途上です。以下の課題を克服していく必要があります。 

 3.1. 技術開発の加速

日本の再使用可能ロケット開発を加速させるためには、以下の技術開発に重点的に取り組む必要があります。

ロケットエンジン

再使用可能ロケットにとって、ロケットエンジンは最も重要な要素の一つです。従来のロケットエンジンよりも推力が高く、かつ再利用可能なエンジンを開発する必要があります。

熱防護

ロケットが大気圏に再突入する際に発生する熱から機体を保護するためには、高度な熱防護技術が必要です。

制御システム

再使用可能ロケットは、従来のロケットよりも複雑な制御システムが必要です。飛行中の姿勢制御や着陸時の精密制御など、高度な制御技術を開発する必要があります。

着陸システム

再使用可能ロケットを安全に着陸させるためには、安全かつ確実な着陸システムが必要です。パラシュートや逆噴射装置など、様々な着陸システムの開発が進められています。

これらの技術開発を加速させるためには、政府と民間企業が協力して取り組むことが重要です。政府は、研究開発資金の提供や規制緩和など、民間企業の活動を支援する必要があります。民間企業は、独自の技術開発を進めるとともに、政府との連携を強化する必要があります。

技術開発の加速により、日本の再使用可能ロケット開発は大きく前進し、宇宙輸送のコスト削減に大きく貢献することが期待されます。

 3.2. 開発費用の調達

日本の再使用可能ロケット開発は、欧米諸国と比べるとまだ発展途上であり、開発費用の調達が大きな課題となっています。開発費用は数百億円規模と見積もられており、政府からの支援だけでなく、民間企業からの投資も必要不可欠です。

政府からの支援

JAXAは、政府からの予算を獲得して再使用可能ロケットの研究開発を進めています。2023年度には、約200億円の予算が計上されています。

民間企業からの投資

近年、宇宙開発分野への民間企業の投資が活発化しています。JAXAは、民間企業との連携を強化し、共同開発や技術供与を通じて開発費用を調達していく考えです。

その他の調達方法
クラウドファンディング
ロケット打ち上げの販売
宇宙旅行サービスの提供

開発費用の調達には、様々な方法が考えられます。これらの方法を組み合わせることで、必要な資金を確保していくことが重要です。

 3.3. 安全性の確保

再使用可能ロケットは、従来の使い捨てロケットと比べて、安全性確保においていくつかの課題があります。

飛行回数が増えるにつれて、故障リスクが高まる
着陸時に事故が発生する可能性がある
再使用によって機体にダメージが蓄積する

これらの課題を克服するために、以下の取り組みが必要です。

飛行試験を積み重ね、信頼性を向上させる
安全基準を策定し、厳格な検査を行う
機体の状態を常に監視し、異常があれば早期に検知する

安全性確保は、再使用可能ロケット開発において最も重要な課題の一つです。これらの課題を克服し、安全性を高めることで、再使用可能ロケットの普及が進むことが期待されます。

 3.4. 規制緩和

日本の再使用可能ロケット開発を推進するためには、規制緩和も重要な課題となります。

現在のロケット打ち上げに関する規制は、安全性確保を目的として策定されています。しかし、再使用可能ロケットは従来のロケットとは異なる技術を用いているため、既存の規制に当てはまらないケースも多くなります。

そのため、再使用可能ロケット開発を円滑に進めるためには、以下の取り組みが必要となります。

打ち上げ許可の簡素化

従来のロケットと比べて飛行回数が多い再使用可能ロケットの場合、毎回個別に打ち上げ許可を取得するのは非効率です。一括許可制度など、より簡便な許可制度の導入が求められます。

安全基準の見直し

再使用可能ロケットの安全性確保には、従来のロケットとは異なる安全基準が必要です。新たな安全基準の策定や、既存の安全基準の見直しが必要となります。

規制緩和は、安全性確保を軽視するものではありません。安全性と効率性を両立できるような規制の枠組みを構築することが重要です。

関連情報
JAXA - 基幹ロケットの再使用化による打ち上げコストの低減: https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUC15AZW0V10C24A2000000/
宇宙輸送の主力「再使用ロケット」。日本が国際競争力を高めるためのカギになる理由: https://newswitch.jp/p/28135

4. 日本の再使用可能ロケット開発の将来

日本の再使用可能ロケット開発は、宇宙開発の革新に繋がる重要な取り組みです。課題を克服し、開発を進めていくことで、以下のような将来像が期待されます。

1. 宇宙輸送コストの大幅削減

再使用可能ロケットの導入により、打ち上げ費用を従来の使い捨てロケットと比べて大幅に削減することができます。これは、衛星打ち上げの頻度や規模を拡大し、宇宙開発の活性化に繋がると考えられます。

2. より頻繁な衛星打ち上げ

打ち上げ費用が低減することで、これまで打ち上げが難しかった小型衛星や観測衛星などを頻繁に打ち上げることが可能になります。これにより、地球観測や気象予報、災害監視などの分野で大きな進歩が期待できます。

3. 宇宙旅行の実現

再使用可能ロケットの開発は、将来的には宇宙旅行の実現にも繋がる可能性があります。安全性と信頼性を向上させることで、より多くの人が宇宙旅行を体験できるようになることが期待されます。

4. 国際競争力の強化

欧米諸国では、SpaceXやBlue Originなどの民間企業を中心に、再使用可能ロケットの開発が進められています。日本もこの流れに遅れず、技術開発を進めていくことで、国際競争力を強化していく必要があります。

5. 宇宙開発の新たな時代

再使用可能ロケットの開発は、宇宙開発の新たな時代を築く可能性を秘めています。課題を克服し、開発を進めていくことで、宇宙開発の未来は大きく変わっていくと言えるでしょう。

関連情報

JAXA - 基幹ロケットの再使用化による打ち上げコストの低減: https://www.kenkai.jaxa.jp/research/rvx/rvx.html
JAXA - 再使用ロケット実験機「RVT」: https://www.youtube.com/watch?v=0v2gMmAes6Q
宇宙輸送の主力「再使用ロケット」。日本が国際競争力を高めるためのカギになる理由: https://newswitch.jp/p/28135

 

補足

 中国の再使用ロケット開発状況

近年、中国は宇宙開発において目覚ましい進歩を遂げており、再使用可能ロケット開発においても欧米諸国に匹敵する技術力を持っていると言われています。

中国では、国営企業と民間企業がそれぞれ独自の再使用可能ロケット開発を進めています。

 国営企業

中国航天科技集団公司(CASC)

* 長征9号ロケットの1段目を再使用可能にする技術開発を進めている。
* 2030年までに初飛行を目指している。
* 推力はSpaceXのFalcon Heavyと同程度となる見込み。

中国運載火箭技術研究院(CALT)

* 小型衛星打ち上げ用の空中発射ロケットを開発している。
* 2025年までに初飛行を目指している。
* 最大300kgのペイロードを高度500kmの太陽同期軌道に投入できる見込み。

民間企業

零壹空間

* 民間企業としては初の再使用可能ロケット「天啓」を開発している。
* 2023年11月に初飛行に成功した。
* 最大150kgのペイロードを高度300kmの低軌道に投入できる。

深藍航天

* 液体メタン燃料ロケット「朱雀一号」を開発している。
* 2024年中に初飛行を目指している。
* 最大1トン以上のペイロードを低軌道に投入できる見込み。

 中国の再使用可能ロケット開発の特徴

中国の再使用可能ロケット開発の特徴は以下の通りです。

* 国営企業と民間企業が協力して開発を進めている。
* 独自技術の開発に力を入れている。
* 開発速度が速い。

中国は、政府の積極的な支援と豊富な資金力、そして優秀な技術者を擁することで、再使用可能ロケット開発において世界をリードする存在になりつつあります。

 中国の再使用可能ロケット開発の将来

中国は、2030年までに再使用可能ロケットによる月探査や火星探査を実現することを目指しています。また、将来的には宇宙旅行事業にも参入する計画があると言われています。

中国の再使用可能ロケット開発の進展は、宇宙開発の新たな時代を築くだけでなく、国際宇宙開発における競争をさらに激化させることが予想されます。

 関連情報

* 中国、小型衛星の軌道投入で空中発射ロケットを開発中–再使用が可能 - UchuBiz: 
* 中国Space Epoch、独自の再使用型ロケットを開発 - UchuBiz: 

中国、大型再使用ロケットを2025年と2026年に打ち上げ予定–直径が4mと5m (UchuBiz) - Yahoo!ニュース