一定以上の収入がある後期高齢者の窓口負担増加
令和4年10月1日より、一定以上の収入がある後期高齢者の窓口負担割合が1割から2割に引き上げられました。対象となるのは、後期高齢者医療の被保険者のうち、世帯主の住民税課税所得が28万円以上である世帯または、世帯内の被保険者1人あたりの年金収入とその他合計所得金額が200万円以上である世帯です。
この制度改正は、高齢化に伴う医療費の増大を抑制し、持続可能な医療制度を構築するためのものであるとされています。しかし、一方で、高齢者の負担増加や、医療の受診抑制につながるのではないかという懸念も示されています。
制度改正の背景
日本の高齢化率は、2025年には30%を超えると予測されています。高齢化に伴い、医療費の増大が懸念されており、厚生労働省は、後期高齢者医療制度の財政を安定させるための対策として、窓口負担の引き上げを検討してきました。
具体的には、以下の3つの対策が検討されました。
- 現役並み所得者の窓口負担割合を現行の3割から4割に引き上げる
- 一定以上の所得がある後期高齢者の窓口負担割合を1割から2割に引き上げる
- 後期高齢者医療制度の保険料率を現行の17.3%から18%に引き上げる
これらの対策について、厚生労働省は、財政的な効果や国民への負担のバランスなどを検討した結果、2番目の対策である、一定以上の所得がある後期高齢者の窓口負担割合の引き上げを実施することとしました。
制度改正の内容
令和4年10月1日より、一定以上の収入がある後期高齢者の窓口負担割合が1割から2割に引き上げられました。対象となるのは、後期高齢者医療の被保険者のうち、以下のいずれかの要件を満たす世帯です。
- 世帯主の住民税課税所得が28万円以上である世帯
- 世帯内の被保険者1人あたりの年金収入とその他合計所得金額が200万円以上である世帯
なお、窓口負担割合が2割となる方には、外来受診の負担増加額を月3,000円までに抑える配慮措置が設けられています。
制度改正による影響
制度改正による影響は、大きく分けて以下の2つが挙げられます。
- 高齢者の負担増加
- 医療の受診抑制
高齢者の負担増加
窓口負担割合が1割から2割に引き上げられることで、高齢者の医療費の自己負担額は2倍になります。例えば、1回の外来診療で1万円の医療費がかかった場合、1割負担では1,000円の負担でしたが、2割負担では2,000円の負担となります。
厚生労働省の試算によると、制度改正により、対象となる約370万人の高齢者の医療費の自己負担額は、年間で約4,000億円増加すると見込まれています。
医療の受診抑制
窓口負担の増加により、医療の受診を抑制する高齢者が増えるのではないかという懸念があります。特に、経済的に余裕のない高齢者や、持病を抱えている高齢者など、受診を控える傾向が強まる可能性があります。
厚生労働省の調査によると、制度改正の対象となる高齢者の約6割が、窓口負担の増加により医療の受診を控える可能性があると回答しています。
制度改正の課題
制度改正には、以下の課題が指摘されています。
- 高齢者の負担増加が大きい
- 医療の受診抑制につながる可能性がある
- 制度の複雑化が進む
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- 高齢者の負担増加が大きい
窓口負担割合の引き上げにより、高齢者の医療費の自己負担額は2倍になります。これは、高齢者の家計にとって大きな負担となります。特に、経済的に余裕のない高齢者や、持病を抱えている高齢者など、生活に支障をきたす可能性もあります。
- 医療の受診抑制につながる可能性がある
窓口負担の増加により、医療の受診を抑制する高齢者が増えるのではないかという懸念があります。特に、経済的に余裕のない高齢者や、持病を抱えている高齢者など、受診を控える傾向が強まる可能性があります。これは、健康被害につながる恐れがあります。
- 制度の複雑化が進む
窓口負担割合の引き上げにより、制度の複雑化が進む可能性があります。現行では、後期高齢者医療の被保険者は、すべて1割負担となっています。しかし、今回の制度改正により、一定以上の所得がある後期高齢者医療の被保険者は2割負担となります。これにより、保険料率や自己負担額などのルールが複雑化し、理解しづらくなる可能性があります。
今後の課題
制度改正により、高齢者の負担増加や、医療の受診抑制が懸念されています。今後は、制度の運用状況を注視し、必要に応じて見直しを行う必要があると考えられます。
具体的には、以下の点について検討が必要と考えられます。
- 高齢者の負担軽減策の検討
高齢者の負担増加を抑えるため、高齢者医療保険料の負担を軽減するなどの対策を検討する必要があります。また、一定の条件を満たす高齢者については、窓口負担の軽減や、医療費の助成を行うなどの対策も考えられます。
- 医療の受診抑制防止策の検討
医療の受診抑制を防止するため、医療費の助成や、医療費の相談窓口の設置などの対策を検討する必要があります。また、高齢者の健康づくりや、医療費の適正利用を促進するための啓発活動も重要です。
まとめ
一定以上の収入がある後期高齢者の窓口負担割合の引き上げは、高齢化に伴う医療費の増大を抑制し、持続可能な医療制度を構築するためのものであるとされています。しかし、一方で、高齢者の負担増加や、医療の受診抑制につながるのではないかという懸念も示されています。
今後は、制度の運用状況を注視し、必要に応じて見直しを行うことで、高齢者の負担増加や、医療の受診抑制を防止し、持続可能な医療制度を構築していくことが重要であると考えられます。
高齢者に負担させる気か