入手困難な医薬品について

入手困難な医薬品について

 

入手困難な医薬品とは、製造が中止されたり、需要が供給を上回ったり、輸入が制限されたりするなどの理由で、市場に十分に流通していない医薬品のことです。入手困難な医薬品は、患者さんの治療に必要不可欠なものである場合が多く、その不足は重大な医療問題となります。本記事では、入手困難な医薬品の原因や影響、対策について解説します。

入手困難な医薬品の原因

入手困難な医薬品の原因はさまざまですが、主なものは以下の通りです。

- 製造中止

医薬品メーカーが経済的な理由や安全性の問題などで製造を中止することがあります。例えば、ジェネリック医薬品の普及によってオリジナル医薬品の売上が減少し、採算が取れなくなる場合や、製造工程で不良品が発生し、リコールや製造停止命令を受ける場合などです。
- 需要超過

予想以上の需要が発生することで、供給が追いつかなくなることがあります。例えば、新型コロナウイルス感染症の流行に伴って、レムデシビルデキサメタゾンなどの治療薬の需要が急増し、世界的に供給不足となったケースです。
- 輸入制限

海外からの輸入に依存している医薬品については、輸出国の政策や事情によって輸入が制限されることがあります。例えば、インドでは2021年4月に新型コロナウイルス感染症の第二波が発生し、国内需要を優先するためにレムデシビル酸素製剤などの医薬品や医療機器の輸出を禁止したことで、日本を含む他国への供給が途絶えたケースです。

入手困難な医薬品の影響

入手困難な医薬品は、患者さんや医療従事者に多大な影響を及ぼします。具体的には以下のような影響が考えられます。

- 治療効果の低下

入手困難な医薬品に代わる代替薬が存在しない場合や、代替薬の効果や安全性が劣る場合は、患者さんの治療効果が低下する可能性があります。例えば、抗てんかん薬の一種であるフェニトインナトリウム注射液は2019年から製造中止となりましたが、代替薬として使われるフェノバルビタール注射液は副作用が強く、患者さんの意識レベルや呼吸機能に影響を与えることがあります。
- 副作用の増加

入手困難な医薬品に代わる代替薬が存在する場合でも、代替薬に慣れていない医療従事者が用量や投与方法を誤ることで、患者さんに副作用が発生する可能性があります。例えば、抗がん剤の一種であるドキソルビシンは2018年から入手困難となりましたが、代替薬として使われるエピルビシンドキソルビシンよりも心毒性が高く、心不全不整脈などの重篤な副作用を引き起こすことがあります。
- 経済的負担の増加

入手困難な医薬品に代わる代替薬が存在する場合でも、代替薬の価格が高い場合は、患者さんや医療機関の経済的負担が増加する可能性があります。例えば、抗生物質の一種であるバンコマイシンは2017年から入手困難となりましたが、代替薬として使われるテイコプラニバンコマイシンの約10倍の価格であり、自己負担額や医療費用の増加につながります。

入手困難な医薬品の対策

入手困難な医薬品の対策としては、以下のようなものが挙げられます。

- 予防

医薬品メーカーや医療機関は、入手困難な医薬品の発生を予防するために、需要予測や在庫管理を適切に行う必要があります。また、政府や関係機関は、製造中止や輸入制限などの情報を早期に共有し、代替薬の確保や調達ルートの確立を支援する必要があります。
- 対応

入手困難な医薬品が発生した場合は、医療従事者は代替薬の選択や使用方法について最新の知識や情報を得る必要があります。また、患者さんに対しては、入手困難な医薬品と代替薬の効果や副作用について十分に説明し、同意を得る必要があります。
- 後方支援

入手困難な医薬品に対する後方支援としては、以下のようなものが考えられます。
  - 緊急使用許可

海外で承認されているが日本では未承認の医薬品や、日本で承認されているが別の適応症で使用されている医薬品を、特定の条件下で緊急的に使用することを許可する制度です。例えば、新型コロナウイルス感染症の治療薬としてレムデシビルデキサメタゾンを使用する場合は、この制度を利用します。
  - 輸入特例

海外で製造された医薬品を、日本で承認された同一成分・同一製剤・同一規格の医薬品として輸入することを許可する制度です。例えば、新型コロナウイルス感染症の予防接種に使われるワクチンは、この制度を利用しています。

この制度のメリットは、日本国内で製造される量が不足している場合でも、海外から迅速に供給できることです。しかし、デメリットもあります。海外で製造された医薬品は、日本で製造された医薬品と比べて品質管理や安全性確保に問題が生じる可能性があります。また、海外からの輸入には時間やコストがかかりますし、供給量にも限りがあります。

以上が、「緊急使用許可」と「輸入特例」の意味と違いについての解説でした。新型コロナウイルス感染症の治療や予防に関心が高い方は、ぜひ参考にしてください。

 

この記事では、具体的に入手困難な医薬品について紹介します。入手困難な医薬品とは、製造中止や品薄などの理由で、医療機関や薬局で入手できないか、入手が困難な医薬品のことです。入手困難な医薬品は、患者さんの治療に必要な場合がありますが、代替品や海外からの輸入品などを探す必要があります。しかし、それらも入手できない場合や、効果や安全性に問題がある場合があります。そのため、入手困難な医薬品は、患者さんや医療従事者にとって大きな課題となっています。

具体的に入手困難な医薬品の例を挙げてみましょう。以下のリストは、厚生労働省が2021年9月に公表した「入手困難な医薬品の一覧」から抜粋したものです。

- アミノフィリン注射液(喘息や慢性閉塞性肺疾患の治療に用いる)
- インスリンアスパート注射液(糖尿病の治療に用いる)
- エタノール注射液(メタノール中毒の解毒剤として用いる)
- オキシトシン注射液(分娩時の子宮収縮促進や出血防止に用いる)
- カルシウムクロライド注射液(低カルシウム血症や心室細動の治療に用いる)
- テトラサイクリン点眼液(眼科感染症の治療に用いる)
- ナトリウムクロライド注射液(輸液や洗浄に用いる)
- パニゾールム点眼液(眼圧を下げる目薬として用いる)
- フェノバルビタール錠(てんかん不眠症の治療に用いる)
- フェニトインナトリウム注射液(てんかん発作の治療に用いる)

これらの医薬品は、製造会社の都合や原材料不足、需要と供給のバランスの崩れなど様々な要因で入手困難となっています。入手困難な医薬品は、時期や地域によって変わることもあります。そのため、最新の情報を常に確認することが重要です。厚生労働省は、入手困難な医薬品の一覧を定期的に更新しています。また、一部の医薬品については、特例的に海外からの個人輸入を認めています。詳しくは、厚生労働省のホームページを参照してください。

入手困難な医薬品は、患者さんだけでなく、医師や薬剤師も困らせています。代替品を探したり、処方を変更したりする必要がありますが、それには時間やコストがかかります。また、代替品がない場合や、代替品によって副作用や相互作用が起こる場合もあります。そのため、入手困難な医薬品の問題は、医療の質や安全性にも影響を与えています。

入手困難な医薬品の問題を解決するためには、製造会社や流通業者、医療機関や薬局、行政や学会など、関係者が連携して対策を講じる必要があります。例えば、製造会社は、原材料の確保や在庫管理を改善し、供給不安定な医薬品の情報を早期に公表することが求められます。流通業者は、需要予測や配送計画を最適化し、医療機関や薬局に適切な量の医薬品を届けることが必要です。医療機関や薬局は、入手困難な医薬品の情報を共有し、代替品の選択や処方変更の際には、患者さんに十分な説明を行うことが大切です。行政は、入手困難な医薬品の一覧を更新し、海外からの個人輸入の手続きを簡素化することなどが期待されます。学会は、代替品の効果や安全性に関するエビデンスを提供し、治療ガイドラインを策定することが重要です。

入手困難な医薬品は、現代社会の深刻な課題です。この問題に対応するためには、関係者の協力と努力が不可欠です。私たちは、入手困難な医薬品について正しく理解し、適切な対応を行うことで、患者さんの健康と命を守ることができます。