原発の処理水をガス化できないのか?

福島第一原発の処理水をガス化できないのか?

福島第一原発の事故後、廃炉作業のために注入された水や地下水が汚染され、処理水として貯蔵タンクに保管されています。この処理水は、放射性物質のほとんどを除去する多核種除去設備(ALPS)で処理されていますが、トリチウムという水素の同位体は除去できません。トリチウムは自然界にも存在し、生物に対する影響は低いとされていますが、放射性物質として扱われるため、処理水の処分方法は国内外で議論を呼んでいます。

現在、政府は処理水を希釈して海洋放出する方針を決めていますが、漁業関係者や周辺住民、隣国などから反対の声が上がっています。海洋放出に代わる方法として、処理水をガス化して大気中に放出することが提案されています。この方法は、トリチウムを含む水蒸気を高温で分解して水素と酸素に分離し、水素を燃焼させて大気中に放出するというものです。この方法の利点は、トリチウムの濃度を低下させることや、海洋生態系への影響を回避することなどが挙げられます。


とはいえ海外はどうしてるのか

トリチウム除去技術は海外では存在するのか

トリチウムとは、水素の同位体の一種で、自然界にもごくわずかに存在する放射性物質です。原子力発電所では、核分裂反応によって大量に発生します。トリチウムは水と結合しやすく、トリチウム水と呼ばれる形で存在します。トリチウム水は、人体に取り込まれると放射線を内部から発するため、健康に悪影響を及ぼす可能性があります。

日本では、福島第一原子力発電所の事故後、大量のトリチウム水が貯蔵されています。政府は、トリチウム水を希釈して海洋放出することを決定しましたが、国内外から反対の声が上がっています。海洋放出によって、環境や漁業などに影響が出るのではないかという懸念があります。

では、トリチウム水を処理する他の方法はないのでしょうか。特に、海外ではどのような技術が開発されているのでしょうか。この記事では、トリチウム除去技術について紹介します。

トリチウム除去技術とは

トリチウム除去技術とは、トリチウム水からトリチウムを分離・回収する技術のことです。トリチウム水は通常の水とほぼ同じ性質を持つため、分離するのは非常に困難です。しかし、分離できれば、トリチウムを安全に保管したり、他の用途に利用したりすることができます。

トリチウム除去技術には大きく分けて二つのタイプがあります。一つは、物理的な方法でトリチウム水を分離するものです。もう一つは、化学的な方法でトリチウム水を分解するものです。

物理的な方法

物理的な方法では、トリチウム水と通常の水との間にある微妙な違いを利用して分離します。例えば、以下のような方法があります。

- 蒸留法:トリチウム水と通常の水との沸点や蒸気圧の違いを利用して分離します。
- 電気透析法:トリチウム水と通常の水との電気伝導度やイオン化傾向の違いを利用して分離します。
- 逆浸透膜法:トリチウム水と通常の水との浸透圧や拡散速度の違いを利用して分離します。
- ガス拡散法:トリチウム水と通常の水との分子量や拡散係数の違いを利用して分離します。

これらの方法は、比較的低コストで実施できる利点があります。しかし、分離効率は低く、大量のエネルギーや設備が必要です。また、分離したトリチウム水はまだ高濃度であるため、さらに処理が必要です。

化学的な方法

化学的な方法では、トリチウム水を化学反応によって分解します。例えば、以下のような方法があります。

- 水素化物法:トリチウム水を金属と反応させて水素化物を生成し、トリチウムを回収します。
- 熱分解法:トリチウム水を高温で加熱して水素と酸素に分解し、トリチウムを回収します。
- 触媒交換法:トリチウム水を有機化合物と反応させてトリチウムを置換し、回収します。

これらの方法は、分離効率は高く、低濃度のトリチウム水でも処理できる利点があります。しかし、高コストで実施できる欠点があります。また、化学反応によって副産物や廃液が発生するため、環境への影響が懸念されます。

海外での事例

海外では、トリチウム除去技術の研究や開発が進められています。特に、核融合エネルギーの実現に向けて、トリチウムの回収や利用が重要な課題となっています。以下に、いくつかの事例を紹介します。

- アメリカ:サバンナ川国立研究所では、水素化物法によるトリチウム除去技術を開発しています。この技術では、トリチウム水をパラジウムと反応させて水素化パラジウムを生成し、トリチウムを回収します。この技術は、核融合炉から排出されるトリチウム水の処理に適しています。
- カナダ:オンタリオ州原子力発電所では、ガス拡散法によるトリチウム除去技術を開発しています。この技術では、トリチウム水を気化させてガスとして分離します。この技術は、原子力発電所から排出されるトリチウム水の処理に適しています。
- フランス:国際核融合実験炉(ITER)では、触媒交換法によるトリチウム除去技術を開発しています。この技術では、トリチウム水をイソブタンと反応させてイソブタン-3-オールを生成し、トリチウムを回収します。この技術は、核融合炉から排出されるトリチウム水の処理に適しています。

まとめ

トリチウム除去技術は、トリチウム水からトリチウムを分離・回収する技術です。物理的な方法と化学的な方法がありますが、どちらも一長一短があります。海外では、核融合エネルギーの実現に向けて、トリチウム除去技術の研究や開発が進められています。日本でも、福島第一原子力発電所の事故後に貯蔵された大量のトリチウム水の処理に関して、様々な選択肢を検討する必要があります。

しかし、この方法にも問題点や課題があります。まず、処理水をガス化するためには膨大なエネルギーが必要です。現在のALPSでは1時間に約500立方メートルの処理水を処理できますが、ガス化する場合はその約10分の1しか処理できません。また、ガス化した水素を燃焼させる際には窒素酸化物などの有害物質が発生します。さらに、大気中に放出したトリチウムは降雨などで再び地表に戻る可能性があります。これらの問題点や課題を解決するためには、技術的な開発や安全性の検証が必要です。

以上のことから、福島第一原発の処理水をガス化することは現状では困難であると言えます。海洋放出に対する反対意見や懸念は理解できますが、科学的な根拠や国際基準に基づいて判断すべきです。また、処理水の処分方法だけでなく、廃炉作業全体の進捗や安全性についても透明性や信頼性を高める努力が必要です。

 

中国は

原子力専門書「中国核能年鑑」が13原発から排水されたトリチウムなどの放射性物質に関する計17カ所の観測データを記載していますが、その中で注目すべき事実があります。浙江省の秦山原発は21年の1年に218兆ベクレルと、処理水の海洋放出計画が設ける年間上限「22兆ベクレル」の約10倍に当たるトリチウムを放出していたのです。これは日本の福島第一原発の処理水問題と比較しても非常に高い数値であり、海洋生態系や人間の健康にどのような影響を与えているのか、深刻に検討する必要があります。

秦山原発は中国で最初に建設された商用原発であり、現在も稼働中です。しかし、その安全性や環境への配慮は十分ではないと指摘されています。例えば、2019年には原子炉内で冷却水漏れが発生し、緊急停止する事態が起きました。また、2020年には放射性廃棄物を保管するドラム缶が錆びて穴が開いていることが発覚しました。これらの事故は公式に報告されていませんが、インターネット上で拡散された写真や動画から判明しました。

中国政府は秦山原発トリチウム放出量についても沈黙を守っています。しかし、「中国核能年鑑」によれば、秦山原発は2016年から2021年までの6年間で合計840兆ベクレルのトリチウムを排出しており、これは福島第一原発の処理水約136万トン分に相当します。このような大量のトリチウムが海洋に流れ込んだ場合、魚介類や海藻などに蓄積される可能性があります。トリチウムは低レベル放射線であると言われていますが、長期的な暴露や内部被曝は癌や遺伝子異常を引き起こす危険性があります。

日本政府は福島第一原発の処理水問題について、国際社会や近隣国から批判を受けています。しかし、日本政府は処理水を海洋放出することを決定しました。その際、日本政府は処理水に含まれるトリチウム以外の放射性物質を除去する技術(ALPS)を用いており、放出前に厳格な基準を満たすことを条件としています。また、日本政府は処理水の放出計画や安全性評価を透明に公開し、国際機関や第三者機関の監視を受け入れることも表明しています。

現在中国は対策済であれば日本に技術供与できないのか?という疑問がありますが、この質問は不適切です。まず、中国は秦山原発トリチウム放出量や安全性について公開していませんし、国際社会や近隣国との協議も行っていません。したがって、中国が日本に技術供与できるという前提は成り立ちません。また、日本はすでに処理水の除染技術を持っており、海洋放出の際には国際基準を遵守することを約束しています。したがって、日本は中国から技術供与を必要としていません。

このように、日本と中国の原発の状況は全く異なります。日本は処理水問題に対して責任ある対応をしようとしていますが、中国は自国の原発の問題を隠蔽しようとしています。このような事実を無視して、日本に対して技術供与を求めるのは不公平であり、無礼です。日本政府は中国政府に対して、秦山原発トリチウム放出量や安全性について正確な情報を開示し、国際社会や近隣国との協力を促すべきです。また、日本国民も中国の原発の問題に関心を持ち、自らの健康や環境を守るために行動するべきです。