1円スマホの消滅で、スマホ市場はどうなる?

1円スマホがついに絶滅について

1円スマホ絶滅

2023年12月27日、公正取引委員会が「電気通信事業分野における競争の促進に関する指針」を改定し、いわゆる「1円スマホ」に代表されるスマホ端末の極端な値引き販売を事実上禁止した。これにより、1円スマホはついに絶滅することになった。

1円スマホは、2010年代後半から大手キャリアの販売代理店を中心に広まった。端末代金を1円にすることで、一般消費者のスマートフォンの購入を促進し、競争力を高める狙いがあった。

しかし、1円スマホは、端末の販売価格を下げるために、販売代理店が通信料金の値上げや、端末の下取り価格の引き下げなどを行うなど、競争を歪める結果となった。また、消費者にとっても、端末の価格を安く購入できる一方で、通信料金が高くなるなどのデメリットもあった。


こうした問題を受け、公正取引委員会は、1円スマホの販売規制に向けた検討を開始。2023年9月に「電気通信事業分野における競争の促進に関する指針」を改定し、端末と回線契約のセット販売における値引き上限を2万2,000円に引き下げた。

さらに、12月27日の指針改定で、販売代理店が単独で行う端末の値引きについても、セット販売と同様に値引き上限を2万2,000円に引き下げた。これにより、1円スマホの販売は事実上不可能となった。

1円スマホの消滅の意味

1円スマホの消滅は、日本のスマートフォン市場にどのような意味を持つのだろうか。

まず、消費者にとってのメリットは、端末の価格がより適正になる点だ。1円スマホの販売が規制されたことで、端末の販売価格は、端末の性能やスペックに応じた適正な価格に近づきつつある。

また、消費者の選択肢が増える点もメリットだ。1円スマホの販売が規制されたことで、消費者は、端末の価格や性能、通信料金などを比較して、自分に合ったサービスを選べるようになった。

一方で、販売代理店にとっては、収益が減少する可能性がある。1円スマホの販売が規制されたことで、端末の販売による収益が減少する一方で、通信料金の値上げは難しいため、収益の減少を補うためには、他のサービスの販売に注力する必要がある。

また、大手キャリアにとっては、競争力の低下が懸念される。1円スマホの販売が規制されたことで、大手キャリアの販売代理店の収益が減少し、競争力が低下する可能性がある。

今後の課題

1円スマホの消滅は、日本のスマートフォン市場の健全化につながる。しかし、今後も課題は残されている。

1つは、端末の価格が適正化されたとしても、通信料金が高いという問題だ。1円スマホの販売が規制されたことで、消費者は端末の価格を抑えることができるようになった。しかし、通信料金は依然として高いため、消費者の負担は依然として大きい。

もう1つは、SIMフリー端末や中古端末の普及が進まない点だ。SIMフリー端末や中古端末は、端末の価格が安いため、消費者にとってメリットがある。しかし、SIMフリー端末や中古端末の販売が十分に進んでいないため、消費者の選択肢は限定されている。

今後は、通信料金の引き下げや、SIMフリー端末や中古端末の普及促進などを通じて、消費者の負担を軽減し、スマートフォン市場のさらなる競争を促進していくことが重要だ。

通信料金の引き下げや、SIMフリー端末や中古端末の普及促進の件については、現在動きがあります。

通信料金の引き下げについては、2023年6月に総務省が、携帯電話事業者に対して、2023年度内に段階的に料金を引き下げるよう要請しました。これを受けて、各携帯電話事業者は、料金プランの見直しや、割引の拡大などを実施しています。

SIMフリー端末や中古端末の普及促進については、総務省が、2023年7月に「SIMフリー端末の普及促進に向けたアクションプラン」を策定しました。このアクションプランでは、SIMフリー端末の販売促進や、中古端末の品質の向上などを盛り込んでいます。

具体的には、以下のような動きがあります。

  • 携帯電話事業者が、SIMフリー端末の取り扱いを拡大
  • 家電量販店などで、SIMフリー端末の販売促進キャンペーンを実施
  • 中古端末の買取・販売業者が、中古端末の品質向上に取り組む

これらの動きにより、通信料金の引き下げや、SIMフリー端末や中古端末の普及促進が進むことが期待されています。

なお、現在のところ、具体的な効果や成果については、まだ見えていません。今後の動向に注目する必要があります。

通信料改正のための法改正は?

通信料金の引き下げには、法の改正が必要かどうかについては、意見が分かれています。

法改正を必要とする主な理由としては、以下の2つが挙げられます。

  1. 携帯電話事業者の囲い込み行為を禁止する

これまで、携帯電話事業者は、端末代金を通信料金とセットにして割引するなどの囲い込み行為を行っていました。この結果、利用者は、端末代金を安くするために、通信料金が高いプランを選ぶ必要がありました。

法改正により、通信料金と端末代金を分離して販売することを義務付けることで、利用者は、端末代金と通信料金を個別に比較して、より安いプランを選ぶことができるようになります。

  1. 競争環境を整備する

携帯電話市場は、NTTドコモKDDIソフトバンクの3社による寡占市場となっています。この結果、各社は、競争を避けるために、料金引き下げに消極的でした。

法改正により、競争環境を整備することで、各社が競争を促進し、料金引き下げにつながることが期待されています。

一方、法改正を必要としないとする主な理由としては、以下の2つが挙げられます。

  1. 行政指導や規制強化で対応可能

行政指導や規制強化により、携帯電話事業者の囲い込み行為を禁止し、競争環境を整備することも可能です。

  1. 法改正による副作用のリスク

法改正により、携帯電話事業者の収益が減少し、サービスや設備の維持に影響を与える可能性があります。また、新たな囲い込み行為が生じる可能性もあります。

結論として、通信料金の引き下げには、法の改正が必要かどうかについては、明確な答えはありません。法改正によるメリットとデメリットを慎重に検討し、最適な判断をする必要があります。

なお、2023年6月に総務省が、携帯電話事業者に対して、2023年度内に段階的に料金を引き下げるよう要請したことを受けて、各携帯電話事業者は、料金プランの見直しや、割引の拡大などを実施しています。

このことから、法改正なくとも、通信料金の引き下げが進んでいると言えます。しかし、今後も、通信料金の引き下げを継続的に進めていくためには、法改正も検討の余地があると言えるでしょう。