EU、化石燃料輸入メタン排出量削減で世界に先駆け

EU 化石燃料輸入でメタン排出制限合意について

 

EU、化石燃料輸入でメタン排出制限合意の意味と課題

欧州連合(EU)は2023年11月15日、化石燃料輸入に温室効果ガスであるメタンの排出制限を設ける法律について合意した。この合意は、EUが気候変動対策を強化する上で大きな意味を持つ。


メタンの排出量削減の重要性

メタンは二酸化炭素(CO2)に比べて地球温暖化効果が約25倍と、非常に強い温室効果ガスである。また、メタンの半減期は約10年と短いため、短期間で温暖化を抑える効果が期待できる。

EUの化石燃料輸入は、メタン排出量の約3分の1を占める。今回の合意により、EUは化石燃料輸入によるメタン排出量を削減し、温暖化対策を強化することが可能となる。

合意の内容

合意内容は、以下のとおりである。

  • 2030年から、欧州に輸入される原油、ガス、石炭の基準メタン排出量を設定。
  • 基準を下回るメタン排出量の燃料のみを輸入可能とする。
  • 基準を下回らない燃料を輸入した場合、輸入業者は罰金を支払う。

基準メタン排出量は、2021年から3年間の平均値をベースに設定される。ガスについては、基準メタン排出量を2021年比で40%削減する。石油については、基準メタン排出量を2021年比で25%削減する。

合意の意味

今回の合意は、EUが気候変動対策を強化する上で大きな意味を持つ。EUは、2030年までに温室効果ガス排出量を1990年比で55%削減することを目標としている。化石燃料輸入によるメタン排出量の削減は、この目標達成に大きく貢献する。

また、今回の合意は、世界的なメタン排出量削減の流れを加速させる可能性がある。EUは、世界最大の化石燃料輸入国である。EUがメタン排出制限を導入することで、他の国々もメタン排出量削減に取り組むようになることが期待される。

課題

今回の合意には、いくつかの課題もある。

一つは、基準メタン排出量が十分に厳しくないことである。ガスについては、2021年比で40%の削減という目標は、十分に野心的とは言えない。

もう一つの課題は、罰金制度の有効性である。罰金制度は、基準メタン排出量を下回るメタン排出量の燃料を輸入する輸入業者を抑制する効果が期待される。しかし、罰金が十分に高額でなければ、輸入業者は罰金を払ってでも基準メタン排出量を超えるメタン排出量の燃料を輸入する可能性もある。

今後の課題

今後は、基準メタン排出量をより厳しくし、罰金制度の有効性を高めることが必要である。また、化石燃料輸入によるメタン排出量の削減に加えて、再生可能エネルギーの導入拡大など、他の温暖化対策も強化していく必要がある。

今回の合意は、EUが気候変動対策を強化する上で重要な一歩となった。今後、EUは、これらの課題を克服しながら、メタン排出量削減をさらに推進していく必要がある。