2023年に発生したダイハツの認証申請における不正問題は、自動車業界に大きな衝撃を与えました。この問題は、ダイハツの経営体制やコンプライアンス体制の不備が原因として指摘されていますが、OEMのあり方についても大きな問題提起となりました。
OEMとは、Original Equipment Manufacturingの略で、自動車メーカーが自社で製造しない部品や車両を、他社に製造委託する契約形態です。ダイハツは、トヨタ自動車の完全子会社であり、両社はOEM関係にあります。
ダイハツの不正問題では、トヨタが車両の基本設計をしており、トヨタが開発した車両をダイハツで製造していました。しかし、車両の認証申請については、ダイハツが主体となって行うことが慣例となっていました。そのため、トヨタとダイハツの間で、車両開発と認証申請の責任分担が明確になっていませんでした。
また、ダイハツの認証申請部門は、開発部門と密接に連携して業務を行っていました。そのため、開発部門からのプレッシャーから、認証申請部門が不正に走ってしまうという職場環境が構築されていました。
ダイハツ問題は、OEM関係の責任分担や職場環境の整備など、OEMのあり方について大きな課題を提起しました。今後、自動車業界では、これらの課題を解決するための取り組みが進むと考えられます。
本記事では、ダイハツ問題を踏まえて、OEMのあり方について検討します。
もくじ
2 ダイハツ不正問題の要因
2-1 車両開発と認証申請の責任分担の不明確さ
2-2 相互牽制が働かない職場環境
3 OEMのあり方への課題
3-1 車両開発と認証申請の責任分担の明確化
3-2 相互牽制が働く職場環境の構築
4 対策の検討
4-1 OEM契約における責任分担の明文化
4-2 両社間の定期的な会議の開催
4-3 第三者機関による監査の実施
5 ダイハツ問題の教訓
5-1 OEM関係の再構築の必要性
2 ダイハツ不正問題の要因
2-1 車両開発と認証申請の責任分担の不明確さ
2-2 相互牽制が働かない職場環境
3 OEMのあり方への課題
3-1 車両開発と認証申請の責任分担の明確化
3-2 相互牽制が働く職場環境の構築
4 対策の検討
4-1 OEM契約における責任分担の明文化
4-2 両社間の定期的な会議の開催
4-3 第三者機関による監査の実施
5 ダイハツ問題の教訓
5-1 OEM関係の再構築の必要性
1 ダイハツ問題、OEMのあり方にも問題提起
2023年に発生したダイハツの認証申請における不正問題は、自動車業界に大きな衝撃を与えました。この問題は、ダイハツの経営体制やコンプライアンス体制の不備が原因として指摘されていますが、OEMのあり方についても大きな問題提起となりました。
OEMとは、Original Equipment Manufacturingの略で、自動車メーカーが自社で製造しない部品や車両を、他社に製造委託する契約形態です。ダイハツは、トヨタ自動車の完全子会社であり、両社はOEM関係にあります。
ダイハツの不正問題では、トヨタが車両の基本設計を委託しており、トヨタが開発した車両をダイハツが製造していました。しかし、車両の認証申請については、ダイハツが主体となって行うことが慣例となっていました。そのため、トヨタとダイハツの間で、車両開発と認証申請の責任分担が明確になっていませんでした。
この責任分担の不明確さは、不正行為を助長する要因となったと考えられます。ダイハツの認証申請部門は、開発部門と密接に連携して業務を行っていました。そのため、開発部門のプレッシャーから、認証申請部門が不正に走ってしまうという職場環境が構築されていました。
ダイハツ問題は、OEMのあり方について、以下の課題を浮き彫りにしました。
今後、自動車業界では、これらの課題を解決するために、OEM関係の再構築が進むと考えられます。
2 ダイハツ不正問題の要因
2-1 車両開発と認証申請の責任分担の不明確さ
ダイハツ問題では、トヨタが車両の基本設計を委託しており、トヨタが開発した車両をダイハツが製造していました。しかし、車両の認証申請については、ダイハツが主体となって行うことが慣例となっていました。そのため、トヨタとダイハツの間で、車両開発と認証申請の責任分担が明確になっていませんでした。
車両の認証申請は、自動車の安全性や環境性能などの基準を満たしていることを証明するための重要なプロセスです。そのため、車両開発と認証申請の責任分担を明確にすることで、両者の役割や責任を明確にし、不正の発生を防止することが重要です。
具体的には、OEM契約において、車両開発と認証申請の責任分担を明文化することが考えられます。また、両社の責任者による定期的な会議を開催し、情報共有や問題の早期発見を図ることも有効です。
2-2 相互牽制が働かない職場環境
ダイハツ問題の要因のひとつとして、相互牽制が働かない職場環境が挙げられます。
ダイハツの認証申請部門は、開発部門と密接に連携して業務を行っていました。そのため、開発部門のプレッシャーから、認証申請部門が不正に走ってしまうという職場環境が構築されていました。
具体的には、以下の点が挙げられます。
- 認証申請部門と開発部門の間で、役割分担や責任の所在が明確になっていなかった
- 認証申請部門の人員が少なく、開発部門の指示に従うしかなかった
- 認証申請部門の社員が、不正行為を報告しても、上司や経営層から適切に対応されなかった
このような職場環境では、認証申請部門の社員は、不正を報告しても、自分の立場が危うくなることを恐れて、黙ってしまう可能性が高くなります。
相互牽制が働く職場環境を構築するためには、以下の点が重要です。
- 認証申請部門と開発部門の役割分担や責任の所在を明確にする
- 認証申請部門の人員を増やし、独立性を高める
- 不正行為の報告体制を整え、社員が安心して報告できるようにする
ダイハツ問題は、OEM関係の再構築だけでなく、自動車業界全体の職場環境の見直しが求められていることを示すものとなりました。
3 OEMのあり方への課題
3-1 車両開発と認証申請の責任分担の明確化
ダイハツ問題では、車両開発と認証申請の責任分担が明確になっていなかったことが、不正問題の大きな要因となりました。
OEM関係においては、車両開発と認証申請の責任分担を明確にすることが重要です。具体的には、以下の点について検討する必要があります。
- 車両の基本設計や安全性に関する責任は、どちらの会社が負うか
- 車両の機能や性能に関する責任は、どちらの会社が負うか
- 車両の製造に関する責任は、どちらの会社が負うか
これらの責任分担を明確にすることで、両社間での役割や責任の認識を共有することができ、不正問題の再発を防止することができます。
また、車両開発と認証申請の責任分担を明確にすることは、OEM関係の透明性と信頼性を高めることにもつながります。
具体的には、OEM契約において、車両開発と認証申請の責任分担を明文化することが考えられます。また、両社の責任者による定期的な会議や、第三者機関による監査などを実施することで、責任分担の遵守状況をチェックすることも重要です。
3-2 相互牽制が働く職場環境の構築
ダイハツ問題の要因の一つとして、開発部門と認証申請部門の間で相互牽制が働かない職場環境が構築されていたことが挙げられます。
相互牽制とは、異なる立場の者が互いにチェックし合うことで、不正やミスを防ぐための仕組みです。OEM関係においては、車両開発と認証申請の責任が異なるため、相互牽制が働くことが重要です。
相互牽制が働く職場環境を構築するためには、以下の点が重要と考えられます。
- 役割や責任の明確化
開発部門と認証申請部門の役割や責任を明確にすることで、お互いの業務内容を理解し、相互にチェックする意識を高めることができます。
- 情報共有の徹底
開発部門と認証申請部門は、互いに情報を共有し、車両の安全性や法令遵守に必要な情報を常に把握できるようにする必要があります。
- 独立した監査体制の構築
開発部門や認証申請部門とは独立した第三者による監査体制を構築することで、客観的な視点から不正やミスをチェックすることができます。
4 対策の検討
4-1 OEM契約における責任分担の明文化
ダイハツ問題の教訓として、OEM契約において、車両開発と認証申請の責任分担を明文化することが重要であると考えられます。
具体的には、以下の事項を明確にすることが考えられます。
- 車両開発の責任範囲
- 認証申請の責任範囲
- 両社の役割と責任
- 情報共有の方法
- 問題発生時の対応
これらの事項を明文化することで、両社間での責任の所在が明確になり、不正の発生を防止する効果が期待できます。
また、責任分担を明文化する際には、以下の点に注意する必要があります。
- 両社の役割や責任を適切に定めること
- 両社が納得できる内容とすること
- 定期的に見直すこと
4-2 両社間の定期的な会議の開催
ダイハツ問題では、車両開発と認証申請の責任分担が明確になっていなかったことが、不正問題の要因の一つとして指摘されました。これを解決するためには、OEM関係において、両社の責任者による定期的な会議を開催し、情報共有や問題の早期発見を図ることが有効と考えられます。
具体的には、以下の内容を議題として検討することが考えられます。
- 車両開発の進捗状況
- 認証申請の進捗状況
- 認証申請に関する課題
- 両社間の連携体制
また、会議では、両社の責任者が直接話し合い、意見を交換することで、お互いの理解を深め、問題を早期に発見・解決につなげることができます。
さらに、会議の開催頻度や参加者については、両社の規模や状況に合わせて検討する必要があります。例えば、大規模なOEM関係では、月1回程度の開催や、開発部門や認証申請部門の責任者だけでなく、経営層も参加するような会議を開催することも考えられます。
両社間の定期的な会議の開催は、OEM関係の透明性と信頼性を高め、不正問題の再発防止につながる有効な手段の一つと考えられます。
4-3 第三者機関による監査の実施
ダイハツ問題を受けて、OEM関係において、第三者機関による監査の実施が検討されています。第三者機関による監査は、以下のメリットが期待されます。
- 客観的な視点による監査
第三者機関は、OEMのいずれにも属していないため、客観的な視点で監査を行うことができます。そのため、不正や不適切な行為の早期発見につながることが期待されます。
- 専門的な知見による監査
第三者機関は、自動車の安全性や環境性能に関する専門的な知見を有しています。そのため、これらの分野における不正や不適切な行為の把握に優れています。
- 継続的な監査による予防効果
第三者機関による監査は、定期的に実施されることが想定されています。そのため、監査結果を踏まえた改善策の実施を促すことで、不正や不適切な行為の再発防止につながることが期待されます。
第三者機関による監査は、OEM関係の信頼性向上や、安全・安心な自動車の提供に貢献する有効な手段と考えられます。今後、具体的な実施方法や頻度などについて、検討が進められると考えられます。
ポイント
5 ダイハツ問題の教訓
5-1 OEM関係の再構築の必要性
ダイハツ問題は、OEM関係のあり方について、大きな警鐘を鳴らすものとなりました。この問題を教訓に、今後の自動車業界では、OEM関係の再構築が進むと考えられます。
OEM関係の再構築には、以下の2つの観点が重要です。
1つ目の観点は、車両開発と認証申請の責任分担の明確化です。ダイハツ問題では、この責任分担が不明確であったことが、不正の温床となったと考えられます。今後は、OEM契約において、車両開発と認証申請の責任分担を明文化し、両社で責任の所在を明確にすることが必要と考えられます。
2つ目の観点は、相互牽制が働く職場環境の構築です。ダイハツ問題では、開発部門からのプレッシャーによって、認証申請部門が不正に走ってしまうという職場環境が構築されていました。今後は、OEM関係において、定期的に両社の責任者による会議を開催し、情報共有や問題の早期発見を図ることや、第三者機関による監査を実施するなど、相互牽制が働く職場環境を構築することが必要と考えられます。
OEM関係の再構築は、自動車メーカーの安全性確保やコンプライアンスの強化に不可欠です。今後、自動車業界では、これらの観点から、OEM関係の再構築が進んでいくと考えられます。