「ナゼ日本ではネット投票ができないのか」
「ナゼ日本ではネット投票ができないのか」
近年、デジタル化が進む中で、選挙におけるインターネット投票の導入が世界各国で検討されています。しかし、日本ではいまだに実現に至っていません。本稿では、日本でネット投票が実現できない理由と課題について探ります。
https://www.yomiuri.co.jp/politics/20210216-OYT1T50191/
目次
1. ネット投票の利点
2. 日本におけるネット投票の現状
3. 技術的課題
- セキュリティの問題
- 本人確認の難しさ
4. 法制度上の障壁
5. デジタルデバイドの問題
6. 国民の信頼と受容性
7. 諸外国の事例と比較
8. 今後の展望と課題
1. ネット投票の利点
ネット投票には多くの利点があります。まず、投票の利便性が大幅に向上します。有権者はスマートフォンやPCを使って、時間や場所を問わず投票できるようになります[1]。これにより、仕事や旅行中でも投票が可能になり、投票率の向上が期待できます。特に若年層の投票率アップが見込まれます[5]。
また、高齢者や障害のある方にとっても、外出せずに投票できるため、投票機会が拡大します[1]。さらに、悪天候による投票率低下の抑制や、離島などからの投票用紙搬送に伴うリスクの解消にもつながります[1]。
開票作業の効率化も大きな利点です。デジタルデータによる迅速かつ正確な自動集計が可能となり、開票作業のスピードアップが実現します[1][5]。加えて、投票所の設営や運営にかかるコストの削減も期待できます[5]。
2. 日本におけるネット投票の現状
日本では、1999年に旧自治省(現総務省)の「電子機器利用による選挙システム研究会」での検討を皮切りに、ネット投票の導入に向けた取り組みが始まりました[5]。2002年には「電磁的記録式投票法」(通称「電子投票法」)が施行され、自治体が条例を定めることで地方選挙でのネット投票が可能になりました[5]。
しかし、現在の日本では国政選挙におけるネット投票は実現していません。一方で、茨城県つくば市では2024年10月の市長選・市議選で、国内初のインターネット投票の実施を目指して準備を進めています[5]。つくば市の取り組みでは、投票所への移動が困難な不在者投票に限定し、マイナンバーカードを持つ有権者が事前申請を行うことで、期日前投票期間中にインターネット投票が可能になる予定です[5]。
3. 技術的課題
セキュリティの問題
ネット投票の実現には、セキュリティの確保が最大の課題の一つです。投票データの改ざんや漏洩を防ぐため、つくば市では投票者のデータと投票内容のデータを切り離し、投票者のデータは匿名化、投票内容のデータは暗号化して管理する方法を採用しています[5]。また、サイバー攻撃によるデータ改ざんの痕跡を瞬時に把握できるシステムの構築や、サーバーの分散管理も行っています[5]。
ブロックチェーン技術の活用も、セキュリティ強化の有効な手段として注目されています。ブロックチェーンを用いることで、投票の秘匿性を確保しつつ、改ざんされることなくすべての投票結果を管理できる可能性があります[5]。
本人確認の難しさ
ネット投票では、投票所以外で行われる投票の本人確認が大きな課題となります。つくば市の取り組みでは、複数の認証方法を採用しています。具体的には、有権者に専用アプリをダウンロードしてもらい、アプリ上で市から郵送された投票用QRコードを読み取り、さらに有権者のマイナンバーカードを読み取ることで投票画面が表示される仕組みを構築しています[5]。
4. 法制度上の障壁
現行の公職選挙法では、立会人が同席する投票所での投票を原則としているため、ネット投票の実現には法改正が必要となります[5]。また、投票の秘密を守ることや、買収や強要による不正投票を防ぐための法的枠組みの整備も課題となっています。
つくば市の取り組みでは、買収や強要による投票を防ぐため、インターネット投票を期日前投票の期間中に限定し、期間中は何度でも投票をやり直せる仕組みを構築しています。さらに、選挙当日に投票所で1票を投じれば、インターネット投票は取り消される仕組みも導入しています[5]。
5. デジタルデバイドの問題
ネット投票の導入に際しては、高齢者や障害のある方などのデジタルデバイド(情報格差)が懸念されています。しかし、専門家の中には、ICTを活用したインターネット投票の実現によって、むしろ高齢者や地方の方々が最も恩恵を受けるという見方もあります[1]。
デジタルデバイドの解消に向けては、使いやすいインターフェースの開発や、デジタル機器の操作に不慣れな人々への支援体制の整備が必要となります。
6. 国民の信頼と受容性
ネット投票の実現には、システムの安全性や信頼性に対する国民の理解と受容が不可欠です。セキュリティ面や停電などに対する不安の声に応えるため、現在の投票所でのICT活用の実態を踏まえつつ、より安全・安心なインターネット投票の実現に向けた取り組みが求められています[1]。
また、若者・高齢者・地方の人・忙しい人など、誰もが政治に参加しやすい環境を創ることの重要性も指摘されています[1]。
7. 諸外国の事例と比較
世界では、アメリカ、エストニア、スイス、フランス、オーストラリアなどでネット投票が実施されています[5]。特にエストニアは、国政選挙で継続的にネット投票を実施しており、2023年3月の国政選挙では、ネット投票による期日前投票が50%を超え、紙による投票を初めて上回りました[5]。
一方、アメリカでは2020年の大統領選挙において、改ざんやハッキングの危険性から24%の自治体がネット投票を採用するにとどまっています[5]。
日本と諸外国の状況を比較すると、人口規模や法制度、技術インフラの違いなどを考慮しつつ、先行事例から学ぶことが重要です。
8. 今後の展望と課題
ネット投票の実現に向けては、技術的課題の解決、法制度の整備、国民の理解と信頼の獲得など、多くの課題が残されています。特に、セキュリティの確保と本人確認の方法の確立が最重要課題となります。
ブロックチェーン技術の活用や、マイナンバーカードを利用した本人確認システムの構築など、新たな技術の導入が期待されています[5]。また、つくば市の取り組みのような小規模な実証実験を重ね、段階的にネット投票の範囲を拡大していくアプローチも考えられます。
さらに、ネット投票の導入が実現した場合、その仕組みを企業の株主総会や社内アンケートなど、ビジネスの様々な領域に応用できる可能性も指摘されています[5]。
今後は、技術の進歩と社会の変化に合わせて、安全で信頼性の高いネット投票システムの構築を目指すとともに、国民の政治参加意識の向上にも取り組んでいく必要があります。
Citations:
[1] https://wisdom.nec.com/ja/technology/2019032701/index.html
[2] https://www.homemate-research-public.com/useful/19201_publi_102/
[3] https://dx-consultant.co.jp/online_voting/
[4] https://vonnector.jp/bible/986/
[5] https://data.wingarc.com/pros-and-cons-of-e-voting-22909
[6] https://www.clair.or.jp/j/forum/pub/docs/539.pdf
[7] https://www.ntt.com/bizon/internet-voting.html
[8] https://www.itmedia.co.jp/news/articles/2411/18/news123.html
[9] https://www.perplexity.ai/elections/2024-11-05/us/president
改ざんやハッキングの危険性はネット投票ではどのくらいあるのか
ネット投票の導入に伴う改ざんやハッキングの危険性は、技術的な側面から見ると非常に高いとされています。以下にその具体的なリスクを解説します。
セキュリティリスク
インターネット投票は、データをデジタル形式で扱うため、ハッキングやデータ改ざんのリスクが常に存在します。特に、サーバーや投票システムへの不正アクセスが行われた場合、選挙結果が操作される可能性があります。エストニアの電子投票システム「i-Voting」では、実際にハッカーがユーザーのコンピュータにマルウェアを仕込み、投票内容を改ざんできることが確認されています[1]。このような事例は、他国でも見られ、ネット投票システムの脆弱性を示しています。
改ざんの手法
ハッカーは、個人のコンピュータに侵入し、IDやパスワードを盗むことで不正投票を行うことができます。また、投票管理システムのサーバーにマルウェアを仕込むことで、正規の投票として不正なデータを送信することも可能です[1][3]。これにより、本来の選挙結果とは異なる結果を導き出すことができるため、選挙の公正性が脅かされます。
代理投票と本人確認
インターネット投票では、代理投票のリスクも存在します。従来の投票方式では立会人がいるため不正が防止されますが、ネット投票では誰でもアクセスできるため、他人になりすまして投票することが可能です。この問題を解決するためには、安全な本人確認方法が必要ですが、現在確立された方法はありません[2][3]。
結論
ネット投票は利便性を提供する一方で、多くのセキュリティリスクを伴います。特に改ざんやハッキングの危険性は高く、それに対する対策が十分でない限り、安全な選挙運営は難しいと言えます。したがって、技術的な進歩とともに、これらのリスクを軽減するための取り組みが求められます。
Citations:
[1] https://gigazine.net/news/20140518-how-russia-hacked-estonian-elections/
[2] https://dx-consultant.co.jp/online_voting/
[3] https://cybersecurity-jp.com/column/44419
[4] https://www.icr.co.jp/newsletter/wtr381-20201228-mizuno.html
[5] https://www.homemate-research-public.com/useful/19201_publi_102/
[6] https://wisdom.nec.com/ja/technology/2019032701/index.html
[7] https://www.technologyreview.jp/s/100206/hackers-are-out-to-jeopardize-your-vote/
[8] https://www.itmedia.co.jp/news/articles/2411/18/news123_2.html