こども家庭庁の成果がないのはナゼか:期待と現実のギャップを検証する

「こども家庭庁の成果がないのはナゼか」について

 

「こども家庭庁の成果がないのはナゼか」

こども家庭庁が2023年4月に発足してから1年以上が経過しました。「こどもまんなか社会」の実現を掲げ、子どもに関する政策を一元化することで大きな期待を集めましたが、その成果を疑問視する声も少なくありません。本稿では、こども家庭庁の現状を客観的に分析し、期待された成果が見えにくい要因を多角的に考察します。

三原大臣のプロフィール写真

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目次:

 1. こども家庭庁設立の経緯と目的
   - 少子化問題への対応
   - 縦割り行政の解消

 2. こども家庭庁の主要施策と現状
   - 子どもの貧困対策
   - 児童虐待防止
   - 少子化対策

 3. 成果が見えにくい要因の分析
   - 短期的成果への偏重
   - 意思決定層の偏り
   - 科学的根拠に基づく政策立案の不足
   - 子どもの権利を中心とした視点の欠如

 4. 諸外国の子ども政策との比較
   - 北欧諸国の事例
   - フランスの家族政策

 5. こども家庭庁の今後の課題と展望
   - 長期的視点に立った政策立案
   - 多様な意見の反映
   - エビデンスに基づく政策評価システムの構築

 6. 結論:真の「こどもまんなか社会」実現に向けて

 

1. こども家庭庁設立の経緯と目的

こども家庭庁は、日本の子どもを取り巻く様々な課題に対応するため、2023年4月1日に発足しました。その設立には主に二つの背景がありました。

- 少子化問題への対応

日本の少子化問題は深刻さを増しています。2021年の合計特殊出生率は1.30と、人口維持に必要な2.07を大きく下回っています[1]。この状況は、将来の労働力不足や社会保障制度の維持に大きな影響を与える可能性があります。こども家庭庁は、この問題に対して包括的かつ効果的な対策を講じることを目的としています。

- 縦割り行政の解消

これまで子どもに関する政策は、厚生労働省文部科学省内閣府など複数の省庁にまたがっていました[2]。この縦割り行政の弊害として、政策の重複や隙間、迅速な対応の困難さなどが指摘されてきました。こども家庭庁の設立は、これらの問題を解消し、子どもに関する政策を一元化することで、より効果的な支援を提供することを目指しています。

2. こども家庭庁の主要施策と現状

こども家庭庁は、子どもを取り巻く様々な問題に対応するため、以下のような主要施策を展開しています。

- 子どもの貧困対策

日本の子どもの貧困率は13.5%(2018年)と、先進国の中でも高い水準にあります[6]。こども家庭庁は、教育費の大幅な負担減や家賃補助などの施策を通じて、子どもの貧困問題の解決を目指しています[1]。しかし、これらの施策は多額の予算を必要とするため、実施には課題が残っています。

- 児童虐待防止

児童虐待の相談件数は年々増加しており、2021年度には過去最多の207,659件に達しました[6]。こども家庭庁は、早期発見・早期対応のシステム構築や、関係機関との連携強化を通じて、児童虐待の防止に取り組んでいます。

- 少子化対策

こども家庭庁は、「結婚・妊娠・出産・子育てに夢や希望を感じられる社会」の実現を目指し、各ステップで個人のニーズに応じた支援に取り組んでいます[2]。具体的には、子育て支援の充実や、仕事と家庭の両立支援などを推進しています。

3. 成果が見えにくい要因の分析

こども家庭庁の設立から約1年が経過しましたが、その成果が見えにくいと指摘されています。その要因として以下が挙げられます。

- 短期的成果への偏重

こども家庭庁は、短期的な成果を求めすぎているという批判があります[1]。例えば、「こどもまんなかアクション」の本格スタートを記念するイベントに1350万円の予算を費やすなど、「やった感」を演出するための施策に偏重している面があります。

- 意思決定層の偏り

現状の意思決定層は、普通の人々の暮らしを十分に理解していないという指摘があります[1]。これにより、実際のニーズとかけ離れた施策が立案される可能性があります。

- 科学的根拠に基づく政策立案の不足

エビデンスに基づく政策立案(EBPM)が十分に行われていないという問題があります[1]。感覚的な判断に基づく施策が多く、科学的な根拠に基づいた意思決定が不足しています。

- 子どもの権利を中心とした視点の欠如

日本の子ども政策は、少子化対策の観点から議論されることが多く、子どもの権利や人権の観点が弱いという指摘があります[1]。これにより、子どもの最善の利益が十分に考慮されていない可能性があります。

4. 諸外国の子ども政策との比較

- 北欧諸国の事例

北欧諸国、特にスウェーデンノルウェーデンマークでは、子ども政策を人権の観点から進めています[1]。保育所の整備や育児休業制度などは、個人が当然受けられるべき権利保障として整備されています。これにより、子育て支援と同時に、男女平等や労働環境の改善にも寄与しています。

- フランスの家族政策

フランスは、長年にわたる包括的な家族政策により、出生率の回復に成功した国として知られています。具体的には、手厚い児童手当や、多様な保育サービス、ワーク・ライフ・バランスの推進などが特徴です。また、マクロン大統領が開催を決めた気候市民会議では、150名の市民を無作為抽出で集め、社会の縮図(ミニ・パブリックス)を作り出すことで、多様な意見を政策に反映させています[1]。

5. こども家庭庁の今後の課題と展望

- 長期的視点に立った政策立案

子どもに関する政策は、その効果が現れるまでに時間がかかることが多いため、長期的な視点に立った政策立案が必要です。短期的な成果にとらわれず、将来を見据えた施策の展開が求められます。

- 多様な意見の反映

意思決定層の多様性を高めることが重要です。例えば、台湾のように若手の社会起業家をリバースメンターとして活用したり、フランスの気候市民会議のように無作為抽出で市民の意見を聞くなど、多様な視点を取り入れる仕組みづくりが必要です[1]。

- エビデンスに基づく政策評価システムの構築

科学的な根拠に基づいた政策立案と評価を行うためのシステム構築が急務です。データの収集・分析能力を高め、政策の効果を客観的に評価し、継続的に改善していく仕組みが必要です。

6. 結論:真の「こどもまんなか社会」実現に向けて

こども家庭庁の設立は、日本の子ども政策における大きな転換点となりました。しかし、真の「こどもまんなか社会」の実現には、まだ多くの課題が残されています。

子どもの権利を中心に据え、長期的な視点で政策を立案し、多様な意見を反映させながら、科学的な根拠に基づいて政策を評価・改善していくことが重要です。また、諸外国の成功事例を参考にしつつ、日本の社会・文化的背景に適した独自の政策を展開していく必要があります。

国民の期待と政府の施策のズレに国民が敏感になってきたのは、それだけ生活に余裕がなくなってきていることの裏返しでもあります[1]。こども家庭庁は、この国民の声に真摯に耳を傾け、子どもたちの幸せと健やかな成長を最優先に考えた政策を展開していくことが求められています。

真の「こどもまんなか社会」の実現は、単にこども家庭庁だけの責任ではありません。社会全体で子どもたちを支え、育てていく意識と仕組みづくりが必要です。そのためには、政府、地方自治体、企業、NPO、そして一人一人の市民が協力し、子どもたちの未来のために行動していくことが重要です。

 

Citations:
[1] https://plus.usio.co.jp/blogs/contents/2023-088
[2] https://gooddo.jp/magazine/poverty/children_proverty/29231/
[3] https://note.nam.co.jp/n/ndd48f0aa29b3
[4] https://www.hokenmarket.net/carna/children/post336.html
[5] https://www.soumu.go.jp/main_content/000840311.pdf
[6] https://www.yamanashibank.co.jp/fuji_note/life/kodomo-mirai.html
[7] https://www.digital.go.jp/assets/contents/node/information/field_ref_resources/e91b13a9-fcee-4144-b90d-7d0a5c47c5f0/944eed68/20230428_news_children_outline_13.pdf
[8] https://www.cas.go.jp/jp/seisaku/kodomo_ibasho_iinkai/pdf/ibasho_houkoku.pdf
[9] https://www.perplexity.ai/elections/2024-11-05/us/president

 

最新の統計によると日本の少子化問題

依然として深刻な状況が続いており、出生率の顕著な改善は見られていません。

2022年の日本の出生数は初めて80万人を下回り、過去最少を記録しました[2]。さらに、2023年の出生数はさらに減少し、約76万人となる見込みです[3]。これは1899年の統計開始以来、最低の数字となります。

出生率に関しても、2021年の合計特殊出生率は1.30と報告されており[1]、人口維持に必要とされる2.07を大きく下回っています。この低い出生率は、将来の労働力不足や社会保障制度の維持に深刻な影響を与える可能性があります。

少子化の主な原因としては以下が挙げられています[1]:

1. 未婚化や晩婚化の進展
2. 若者の結婚及び出産に関する意識の変化
3. 育児に対する経済的負担の大きさ
4. 男女間の賃金格差の存在
5. 育児や家事における女性の負担の大きさ

これらの問題に対処するため、政府はこども家庭庁を設立し、子育て支援の充実や仕事と家庭の両立支援などの施策を推進しています[2]。しかし、これらの取り組みの効果が出るまでには時間がかかると考えられ、現時点では出生率の改善は見られていません。

少子化問題の解決には、安定的な雇用と賃上げ、男女間の賃金格差の改善、育児による経歴断絶の防止など、社会全体での取り組みが必要とされています[1]。また、多様な家族形態を認め、社会保障制度の恩恵が広く行き渡るような社会構築も重要な課題となっています。

Citations:
[1] https://www.nli-research.co.jp/report/detail/id=75864?site=nli
[2] https://gooddo.jp/magazine/poverty/children_proverty/29231/
[3] https://www3.nhk.or.jp/news/html/20240227/k10014372041000.html
[4] https://dl.ndl.go.jp/view/download/digidepo_11911775_po_1163.pdf?contentNo=1
[5] https://gooddo.jp/magazine/health/low_birthrate_and_aging/
[6] https://note.nam.co.jp/n/ndd48f0aa29b3
[7] https://www5.cao.go.jp/keizai-shimon/kaigi/special/future/sentaku/s3_1_2.html
[8] https://sorabatake.jp/31422/