V溝直播の米作りとは?新しい稲作技術の全貌とその利点

「V溝直播の米作りとは」について

 

「V溝直播の米作りとは」

近年、日本の稲作において注目を集めている「V溝直播」は、従来の移植栽培とは異なる革新的な栽培方法です。この技術は、労働時間の削減やコスト効率の向上など、様々な利点を持ち、特に新潟県上越市を中心に急速に普及が進んでいます。本文では、V溝直播の特徴や利点、そして実際の導入状況について詳しく解説します。

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 目次

1. V溝直播の基本概念
2. 従来の移植栽培との違い
3. V溝直播の利点
   - 労働時間の削減
   - コスト効率の向上
   - 作業の平準化
4. 新潟県上越市での普及状況
5. V溝直播の課題と今後の展望

 

 1. V溝直播の基本概念

V溝直播は、愛知県農業総合試験場が1994年に開発した革新的な稲作技術です。この方法では、乾田状態の田んぼにV字型の溝を掘り、その溝に直接種もみと肥料を同時に播種します[2]。従来の移植栽培とは異なり、育苗や田植えの工程が不要となり、大幅な省力化を実現します。また、この技術は中干しも必要としないため、水管理の面でも効率的です[2]。

 2. 従来の移植栽培との違い

従来の移植栽培では、春に代かきをして田んぼに苗を植え付けるのが一般的でした。一方、V溝直播では以下の点が大きく異なります:

- 代かきが不要
- 育苗作業が不要
- 田植え作業が不要
- 種子のコーティングが不要

特に、従来の直播栽培では鳥害を防ぐために種子を鉄粉などでコーティングする必要がありましたが、V溝直播ではV字型の溝に種をまくため、鳥のくちばしが届かず、コーティングが不要となります[1]。

(研究成果)降雨後の土壌でも適期を逸さず播種できる「畝立て乾田直播機」 | プレスリリース・広報

 

 3. V溝直播の利点

 労働時間の削減

V溝直播は、育苗と田植え作業を省略できるため、大幅な労働時間の削減が可能です。愛知県の調査によると、移植栽培と比較して労働時間を30%削減できることが報告されています[2]。

 コスト効率の向上

労働時間の削減に加え、育苗にかかる資材や苗の運搬コストが不要となるため、overall的なコスト効率が向上します。また、種子のコーティングが不要なことも、コスト削減に寄与しています[1]。

 作業の平準化

V溝直播は移植栽培とは異なる生育ペースを持つため、稲刈りの時期を分散させることができます。これにより、作業の平準化が可能となり、農家の労働負担を軽減します[1]。特に、規模の大きな農家や法人経営では、この作業分散の利点が大きく、栽培面積の拡大にもつながっています。

 4. 新潟県上越市での普及状況

新潟県上越市では、V溝直播の普及が急速に進んでいます。上越地域振興局の集計によると、2024年秋の時点でV溝直播を採用した栽培面積は約200ヘクタールに達し、4年間で2.4倍に増加しました[1]。この急速な普及は、農家の高齢化や肥料・資材の高騰が続く中、担い手の確保や経営の安定化への期待を反映しています。

 5. V溝直播の課題と今後の展望

V溝直播は多くの利点を持つ一方で、いくつかの課題も存在します。例えば、従来の移植栽培とは異なる栽培管理技術が必要となるため、農家がこの新しい技術に適応するための支援や教育が重要です。

また、地域や気候条件によっては、V溝直播の効果が異なる可能性があるため、各地域に適した栽培方法の確立が求められます。

今後の展望としては、V溝直播技術のさらなる改良や、AIやIoTを活用した精密農業との融合が期待されます。また、この技術を活用した大規模経営や複合経営の可能性も広がっており、日本の稲作における重要な選択肢の一つとして、さらなる普及が見込まれます[3]。

 

Citations:
[1] https://www.niigata-nippo.co.jp/articles/-/507589
[2] https://www.pref.aichi.jp/soshiki/nogyo-keiei/v-choku.html
[3] https://www.maff.go.jp/tokai/noson/nochi/eino/attach/pdf/index-2.pdf
[4] https://www.naro.go.jp/publicity_report/publication/files/manufacturing_technique_manual_no1_s.pdf
[5] https://news.yahoo.co.jp/articles/cbec4d537a1e65dfdebe3c27f2de30cf29b30857
[6] https://www.naro.go.jp/publicity_report/press/laboratory/karc/157519.html
[7] https://www.pref.mie.lg.jp/common/content/000166580.pdf
[8] https://agriknowledge.affrc.go.jp/RN/2010892621.pdf

 

補足

 V溝直播のデメリット

V溝直播は多くの利点を持つ革新的な稲作技術ですが、いくつかのデメリットも存在します。以下にV溝直播のデメリットをまとめます:

 肥効の問題

V溝直播を含む乾田直播栽培では、移植栽培に比べて肥効が劣る傾向があります。特に初年度は施肥量を移植栽培の10~20%程度増やす必要があります[2]。これは、追肥を土壌に混和できず地表に施用するため、肥効を十分に発揮できない場合があるためです。

 湿害のリスク

不耕起栽培の一種であるV溝直播では、湿害が発生しやすいというデメリットがあります。特に粘土質の土壌では通気性が悪く、湿害や酸素不足に陥りやすい点に注意が必要です[2]。

 除草作業の増加

耕起には除草効果があるため、V溝直播のような不耕起栽培では別途除草対策を講じる必要があります。そのため、慣行栽培よりも除草作業の回数や除草剤の量が増え、土壌への負担も増大する可能性があります[2]。

 収量減少の可能性

不耕起栽培では、土壌表面を作物残さで覆うため地温が低下し、出芽が不安定になったり、病害虫が発生しやすくなったりすることがあります。その結果、収量が減少する可能性があります[2]。

 技術習得の必要性

V溝直播は従来の移植栽培とは異なる栽培管理技術が必要となります。そのため、農家がこの新しい技術に適応するための支援や教育が必要となり、導入初期には労力やコストがかかる可能性があります。

 地域適応性の問題

気候条件や土壌の性質によっては、V溝直播が適用できない場合があります。特に粘土質の土壌では、播種時に土が固まって十分に覆土をできず、発芽が不安定になり欠株が出やすい点に注意が必要です[2]。

これらのデメリットを考慮しつつ、各地域や農家の状況に応じてV溝直播の導入を検討することが重要です。

 

Citations:
[1] https://www.niigata-nippo.co.jp/articles/-/507589
[2] https://minorasu.basf.co.jp/80714
[3] https://www.maff.go.jp/tokai/noson/nochi/eino/attach/pdf/index-2.pdf
[4] https://www.pref.aichi.jp/soshiki/nogyo-keiei/v-choku.html
[5] https://www.zennoh.or.jp/members/pdf/gijyutu_2-01a.pdf
[6] https://news.yahoo.co.jp/articles/cbec4d537a1e65dfdebe3c27f2de30cf29b30857
[7] https://www.naro.go.jp/publicity_report/publication/files/manufacturing_technique_manual_no1_s.pdf
[8] https://nitinoki.or.jp/kikaika-mail-mag/column/column_07/column0704/01.htm