「ナゼ訪問介護の倒産過去最多なのか」について
「ナゼ訪問介護の倒産過去最多なのか」
近年、介護業界、特に訪問介護事業者の経営状況が厳しさを増しています。2024年上半期には介護事業者の倒産件数が過去最多を記録し、その半数を訪問介護事業者が占めるという衝撃的な事態となりました[1][2]。この状況は、高齢化が進む日本社会において深刻な問題となっています。
以下、訪問介護事業者の倒産が急増している背景と要因について詳しく見ていきます。
目次
1. 厳しさを増す経営環境
2. 倒産件数増加の直接的要因
3. 訪問介護の基本報酬引き下げの影響
4. 人材確保の困難さ
5. 今後の展望と課題
1. 厳しさを増す経営環境
介護事業者、特に訪問介護事業者の経営環境は近年著しく悪化しています。2022年度の介護事業所・施設の収支差率は全サービス平均で2.4%と前年度比0.4%減少し、収益悪化の傾向が明確になっています[1]。訪問介護の収支差率は7.8%と比較的高いものの、これは大手法人や都心部の事業所が数字を押し上げているためで、地方の小規模事業所の状況は厳しいと考えられます。実際、訪問介護事業所の約40%が赤字経営という調査結果も出ています[1]。
物価高騰とコロナ禍の影響により、利用者獲得と職員確保が困難になる一方で、経費も増加しています。公的支援はあるものの、事業者はマイナス分を十分にカバーできていない状況です[1]。
2. 倒産件数増加の直接的要因
倒産件数増加の直接的な要因として、以下の2点が挙げられます:
1. ゼロゼロ融資の返済開始:
コロナ禍で実施された実質無利子・無担保の融資の返済期限を迎える事業者が増加しています。返済措置期間の延長ができなかった事業者の資金繰りが悪化しています[1]。
2. 介護報酬改定:
2024年度の介護報酬改定で訪問介護の基本報酬が引き下げられました。この改定は、経営が厳しい小規模事業者に大きな心理的影響を与え、事業所の閉鎖や撤退の決断につながった可能性があります[1]。
これらの要因により、2024年1月から5月までの介護事業者の倒産件数は72件と過去最多を記録し、そのうち半数近い34件が訪問介護事業者でした[1]。
3. 訪問介護の基本報酬引き下げの影響
2024年度の介護報酬改定による訪問介護の基本報酬引き下げは、事業者に大きな影響を与えています。この改定は2024年1月の時点で発表されており、厳しい環境の中で運営を続けてきた小規模事業者が将来を悲観し、事業所の閉鎖や撤退を決断するきっかけとなった可能性があります[1]。
報酬引き下げの影響は、2024年4月以降に本格化すると予想されており、今後さらに倒産件数が急増する可能性が高いと懸念されています[1]。
4. 人材確保の困難さ
介護業界の人材確保は年々困難になっています。コロナの「5類」への移行後、他産業の経済回復に伴い介護業界の有効求人倍率が悪化傾向にあります[1]。さらに、物価高騰に対する他産業の賃上げにも介護業界は遅れをとっています。
採用費や人件費の高騰が収益悪化を招く一方で、人員確保の困難さが極まっていることも倒産件数増加の大きな要因となっています[1]。特に小規模な訪問介護事業者にとって、この問題は深刻です。
5. 今後の展望と課題
介護事業者の経営環境は厳しさを増していますが、一方で新規参入も増加しています。2023年には3203社の新規介護事業者が設立され、5年連続で前年を上回っています[1]。この新規参入の増加は競争激化につながり、事業者にはさらなる経営努力が求められることになります。
今後の課題として以下が挙げられます:
1. データ整備:
介護事業者の正確な数の把握が困難であり、データ整備が重要な施策となります[1]。
2. 追加支援策の検討:
3年後の次期介護保険制度改正・報酬改定を待つだけでなく、政府による単年度ごとの追加支援策の検討が必要です[1]。
3.人材確保・定着対策:
特に訪問介護事業者に対する人材確保・定着に向けた対策が急務です[1]。
これらの課題に取り組むことで、訪問介護事業者の経営安定化と、高齢化社会における持続可能な介護サービスの提供が期待されます。
Citations:
[1] https://www.joint-kaigo.com/articles/28276/
[2] https://www.joint-kaigo.com/articles/27703/
[3] https://news.yahoo.co.jp/articles/28acc14dda99d0e8d0ee6e94009db0fdec0717be
[4] https://news.ntv.co.jp/n/rnb/category/life/rb52db69948b61488fab794486764e5b29
[5] https://news.yahoo.co.jp/articles/df240a08bfc7eebd96fffbaad321bb8f93ff34e6
[6] https://www.tsr-net.co.jp/data/detail/1198225_1527.html
[7] https://kaigo.homes.co.jp/tayorini/news_column/38/
[8] https://care-infocom.jp/article/18062/
介護業界でナゼ新規参入が増加か?
1. 高齢化社会の進展による市場拡大
日本の高齢化が急速に進んでおり、65歳以上の高齢者人口が増加し続けています。2050年には全人口の35%を超えると予想されており、介護サービスの需要が高まっています[1]。
2. 介護市場の成長
介護保険制度が開始された2000年には3.6兆円だった介護市場が、2020年には15兆円近くまで拡大しています[1]。この市場の成長性が新規参入を促しています。
3. 安定したキャッシュフロー
介護事業では、報酬の9割が国民健康保険団体連合会からの支払いとなるため、貸し倒れのリスクが低く、キャッシュフローが安定しています[1]。
4. 都市部での安定的な介護ニーズ
特に都市部を中心に、安定的な介護ニーズの拡大が見られます[2]。
5. 他業種からの参入
介護市場の成長性を見込んで、他業種からの新規参入や買収、新規事業の立ち上げが活発に行われています[1]。
6. 将来的な市場拡大の見込み
高齢化に伴う市場拡大を見据えて、今後も介護事業者の新規参入増加が見込まれています[2][3]。
一方で、新規参入の増加により競争が激化し、人材や利用者の獲得競争が激しくなっています。また、介護報酬の加算取得や生産性向上など、事業者に求められる要件も増えており、優勝劣敗の新陳代謝が進んでいます[2][3]。
このような状況下で、介護事業者には人材確保、賃金上昇、効率化、そして自立的な経営革新が求められています[2][3]。
Citations:
[1] https://kaigoplus.com/column/394
[2] https://www.joint-kaigo.com/articles/28129/
[3] https://www.ndsoft.jp/info/law_kaigo2024/kaigo_joint/331627
[4] https://www.joint-kaigo.com/articles/28276/
[5] https://www.houjinhokenlabo.com/fukushi/fukushi-04/14206/
[6] https://kaigoplus.com/column/64
[7] https://pro-d-use.jp/blog/advantages-and-disadvantages-of-nursing-care-business/
[8] https://news.yahoo.co.jp/articles/df240a08bfc7eebd96fffbaad321bb8f93ff34e6