最高裁判所裁判官国民審査6人の中で誰をやめさせるか?有権者が知っておくべきポイント

最高裁判所裁判官国民審査6人の中で誰をやめさせるかについて

 

最高裁判所裁判官国民審査6人の中で誰をやめさせるか」

最高裁裁判官に対する国民審査が、衆院選の投票日と同日に行われることが迫っています。この制度は、裁判官が「憲法の番人」として適切かどうかを有権者が判断する重要な機会ですが、多くの有権者は審査対象の裁判官について知らないため、無関心や白紙投票が目立つ現状があります。そこで、今回審査対象となる6人の経歴や人柄を詳しく解説します。

https://www3.nhk.or.jp/news/special/kokuminshinsa/2024/assets/img/figure/youshi_big.jpg

目次
1. 国民審査とは
2. 審査対象の6人
   - 今崎幸彦
   - 尾島明
   - 宮川美津子
   - 石兼公博
   - 平木正洋
   - 中村愼
3. 投票方法と注意点
4. 制度の意義と過去の実績

## 1. 国民審査とは
国民審査は、日本の最高裁判所の裁判官がその職務にふさわしいかどうかを国民が評価する制度です。この制度は、内閣から任命された裁判官に対して行われ、衆院選の投票日と同日に実施されます。審査対象の裁判官に対して「辞めさせたい」と思う場合は、その氏名の上に「×」を記入します。過去には190人以上の裁判官が審査を受けましたが、罷免された例は一度もありません。この制度は、日本特有のものであり、国民が司法に対して意見を示す貴重な機会となっています。

 2. 審査対象の6人
1. 今崎幸彦
- 生年・出身: 1957年、兵庫県
- 経歴: 京都大学法学部卒業後、最高裁判所長官に就任。裁判員制度に関与し、法律雑誌にも寄稿。
- 特徴: 無趣味と自称しつつも、法廷での経験が豊富で、社会的な問題に対しても積極的に意見を述べる。

地方裁判所での判決】

京都市営地下鉄の駅で警察官と市民が揉み合いのケンカとなり、市民が前歯を折られて警察官が現金5万円を支払った事例で、市民のみが傷害罪で起訴された事例。今崎裁判官は執行猶予付き有罪判決を言い渡し「事件を隠すため金銭を払った警察官にも落ち度はあるが、先に手を出したのは市民のほう」と指摘した。

また、元横綱朝青龍から1億円をダマし取った男に対して懲役5年6ヵ月の実刑判決を言い渡しつつ、朝青龍に対しても「同情を禁じえないが、怪しげな投資話に乗ったところに甘さがあった」と指摘した。

最高裁判所での判決】

戸籍上は男性で、女性として生活しているトランスジェンダー経済産業省職員が、職場では勤務先オフィスから離れた女子トイレしか使用を認めない人事院の判定を不服として訴えた事例。その判定を違法とした結論を支持しつつ「この基準は不特定の人々が使う公共施設にも当てはまるわけではない。一律の解決策になじまず、社会的な議論が欠かせない」との補足意見を述べた。

また、殺人被害で死亡した男性の同性パートナー遺族に、一般の夫婦と同じように犯罪被害者給付金の支給を認めた判決に対して「この解釈がほかの法令に波及する恐れがあり、社会的影響が大きい」と反対意見を述べた。

 

2. 尾島明
- 生年・出身: 1958年、神奈川県
- 経歴: 東京大学法学部卒業後、40年にわたり裁判官として活動。趣味はフルート演奏や美術鑑賞。
- 特徴: 国際的な経験も豊富で、多様な視点を持ち、特に国際貿易問題にも精通。

神奈川県藤沢市出身で、裁判所に所属しながら通産省(現在の経済産業省)に出向し、WTO世界貿易機関)の紛争解決手続きの策定にも携わるなど、国際的にも活躍してきた。『博士の愛した数式』などで知られる芥川賞作家、小川洋子さんの文体に惹かれるという。

高等裁判所での判決】

東日本大震災による福島第一原発の停止で工場が操業不能になり、損害賠償を求めた企業に対し、地裁が認めた賠償額を1億円以上減額した。

最高裁判所での判決】

ミュージシャンで俳優のピエール瀧氏が薬物事件で有罪判決を受け、その出演映画への助成金の交付が取り消された事例で「表現の自由の観点から見過ごせない措置だ。出演俳優が助成金から直接利益を受け取るわけではない」と、助成金の交付を命じた。

また、1票の格差が最大で3.03倍に広がった2022年の参院選で、憲法に違反しないと結論づけた多数意見に対し、格差を是正しようと努力するも進展が見られず「違憲状態」だとする反対意見。

 

 

3. 宮川美津子
- 生年・出身: 1960年、愛知県
- 経歴: 東京大学法学部卒業後、弁護士として活動し、その後最高裁判事に就任。
- 特徴: 知的財産権に詳しく、多様なエンタメにも精通している。

弁護士から最高裁入りした宮川美津子氏は愛知県豊橋市の出身で、特許や商標など知的財産権に詳しい専門家として活動。仕事柄、多様なエンタメに触れるよう努め、音楽では米津玄師や藤井風、King Gnuがお気に入り。

最高裁判所での判決】

在日米軍辺野古基地の建設予定海域に生息する大量のサンゴを移植するよう、国が沖縄県に行なった命令は合法との判決。基地建設に反対する県の訴えを退けた。

2012年の国民年金法改正で年金受給額が減らされたのは、憲法で保障された生存権や財産権の侵害だと訴えられた裁判で、「年金制度の持続可能性を確保する観点から、減額は不合理といえない」として国民側敗訴の判決。

 

 

 4.石兼公博
- 生年・出身: 1958年、山口県
-経歴: 国連日本政府代表部大使を退官後、最高裁判事に就任。
- 特徴: 外交官としての経験を活かし、国際問題にも精通しており、特に人権問題への関心が高い。

外交官キャリアから最高裁に入った石兼公博氏は、フランスやアメリカの日本大使館勤務を経て、福田康夫首相の時代には総理秘書官を務めた。アジア大洋州局長として韓国慰安婦問題や北朝鮮ミサイル問題の解決を目指し奔走。その後、国連大使になり、ロシアを非難する安保理決議が出されてもウクライナへの武力攻撃がやまない現状に「ものすごいフラストレーションだ」と述べた。

最高裁判所での判決】

戦後しばらく「不良な子孫の出生予防」の名目で、特定の障害を持つ国民に本人の同意なく不妊手術を行なうことを認めていた旧優生保護法憲法に違反し、被害者に国家賠償すべきとする結論に賛同(この判決には今崎長官、尾島判事、宮川判事も関与しており同意見)。

 

5. 平木正洋
- 生年・出身: 1961年、兵庫県
- 経歴: 東京大学法学部卒業後、最高裁まで昇進。趣味は朝のウォーキング。
- 特徴: メディアとの関係が複雑でありながらも、公正な報道を促進する姿勢を持つ。

裁判官として最高裁まで出世した平木正洋氏は、裁判員制度下の事件報道に関する会合の場で「容疑者の自白や前科、生い立ちなどの報道は一般市民に偏見を与えるため配慮が必要」と述べ、メディア関係者らの反発を食らった。若手時代にはオウム真理教の幹部だった村井秀夫の刺殺事件に陪席裁判官として関与。「日本はテロのない平和な国だと思っていたので、衝撃的だった」と当時を振り返る。観劇が趣味で、歌舞伎や文楽から宝塚歌劇団吉本新喜劇まで幅広く鑑賞する。

高等裁判所での判決】

とある町長選で票の取りまとめを頼んだ有権者に2000円相当の梅干しを配ったのが票の買収か争われた裁判で、地裁で示された有罪判決を支持した。

積水ハウスが"地面師"組織に架空の土地取引を持ちかけられて55億円をダマし取られた詐欺事件で、懲役7年を言い渡した地裁判決を支持。

 

6. 中村愼
- 生年・出身: 1961年、大阪府
- 経歴: 京都大学法学部卒業後、東京高等裁判所長官から昇進。
- 特徴: 健康づくりに熱心で、水泳やウォーキングを趣味としている。

大阪市出身の中村愼裁判官は、京都大学法学部を卒業後、裁判官として活動し、主に民事裁判を担当してきた。オフの時間は健康づくりのため、水泳やウオーキングに勤しむ。

地方裁判所での判決】

テレビ所有者にNHKとの受信契約を義務づける放送法の規定は契約の自由を害すると市民が訴えた裁判で「義務づけには一定の合理性や必要性がある」と訴えを退けた。

全国小売酒販組合中央会の年金資金145億円が回収不能になった事件で、組合に海外社債への投資を持ちかけたブローカーに賠償を命じたが、投資を仲介したクレディ・スイスについては「リスクの説明義務違反はあったが、投資決定には関与していない」として、賠償は不要と結論づけた。

 

 

 3. 投票方法と注意点
国民審査では、有権者は投票所で配布されるうぐいす色の投票用紙に対して辞めさせたい裁判官の名前の上に「×」を記入します。何も記入しない場合、その裁判官は信任されることになります。無効票となるケースには以下があります:
- 「×」以外の記載(例:氏名以外の文字)
- 複数の名前を書くこと
- 投票用紙以外の紙に記入すること

投票所では受付で入場券を提示し、その後投票用紙を受け取ります。投票時間は午前7時から午後8時までですが、一部自治体では異なる場合がありますので注意が必要です。

 4. 制度の意義と過去の実績
国民審査制度は、日本独自のものであり、有権者が司法に対して意見を示す貴重な機会です。この制度によって、有権者最高裁裁判官の適格性について判断することができます。しかし過去には一度も罷免された裁判官がいないため、その実効性について疑問視されることもあります。それでも、この制度は国民の声を司法に反映させる重要な手段として機能しています。

 

Citations:
[1] https://www.pref.tochigi.lg.jp/senkyo/24shugi/itinichi/itiniti2.html
[2] https://www.jimin.jp/election/results/sen_san26/flow/
[3] https://blog.smartsenkyo.com/180/
[4] https://www.city.fukuoka.lg.jp/senkan/senkyo/shisei/senkyotokusetu/shugi/shugi_hoho.html
[5] https://www.pref.saitama.lg.jp/e1701/letsgosenkyo.html
[6] https://www.soumu.go.jp/senkyo/senkyo_s/naruhodo/naruhodo04.html
[7] https://www.nhk.or.jp/senkyo/database/shugiin/2024/knowledge/
[8] https://www.town.shibayama.lg.jp/0000000405.html

 

国民審査制度は、日本独自のものであり、有権者が司法に対して意見を示す貴重な機会です

 

とはいえどんな上級国民か知れず国民はみんなスルーするだろう。

司法に物を言うべきではないのか