参政党ってなんなのか

選挙が近づく。

県会議員だが。

見慣れない参政党という候補者が出てきた。

もう国政政党として認められている。

あのへんなNHK48党みたいなものかな?

調べてみる。

参政党とは何か?「オーガニック信仰」が生んだ異形の右派政党

古谷経衡作家/評論家/一般社団法人 令和政治社会問題研究所所長
2022/7/11(月) 13:09
参政党候補として演説する東京選挙区の河西泉緒候補と、同党比例候補の赤尾由美氏(写真:つのだよしお/アフロ)
 政治団体「参政党」が今回の参院選挙全国比例で1議席神谷宗幣氏)を獲得した(今回選挙で”政党”に昇格)。当初泡沫と思われた参政党はなぜ議席を獲得したのか。実は、当選した同党事務局長の神谷宗幣氏と私は約10年前に出会った。彼と一緒に少なくない期間、仕事をした経験もある。神谷氏とはいったいどのような人物なのだろうか。彼の思想から参政党は如何にして生まれたのか。令和の政界に突如として現れた参政党の実態に迫る―。

 参政党は2020年4月に政治団体として結成された。結党当初の5人のボードメンバーのうち、神谷氏を除く3人が現在に至るまで意見対立により同党を離れるなど、短期間で主要幹部が大きく入れ替わっている。その原因の多くは、2020年末~2021年初頭に保守界隈で沸き起こった「バイデン候補陣営の不正選挙」を信じるか、信じないか(いわゆる勝ち組・負け組論争)という保守界隈の内部抗争だった。結果的にこの時「トランプ前大統領の勝利を信じ、バイデン候補の不正選挙を糾弾する」とした側が参政党に残る形になった。参政党が「日本版Qアノン」などと揶揄される所以はここである。

・「天皇を中心とした国家」謳う
 さて、同党綱領には「先人の叡智を活かし、天皇を中心に一つにまとまる平和な国をつくる」「日本国の自立と繁栄を追求し、人類の発展に寄与する」「日本の精神と伝統を活かし、調和社会のモデルをつくる」とある。のっけから「天皇を中心とした国家」を謳い、強い保守色がある。

 また同党は、三つの重点政策として、

1)「子供の教育」、

2)「食と健康、環境保全」、

3)「国のまもり」を掲げる。

1)の「子供の教育」については、”学力(テストの点数)より学習力(自ら考え自ら学ぶ力)の高い日本人の育成”を謳い、「国や地域、伝統を大切に思える自尊史観の教育」を掲げ、自尊史観(造語)の対義語としていわゆる「(リベラルによる)自虐史観」を想定していると思われ、保守色が強い。

3)「国のまもり」では特に”日本の舵取りに外国勢力が関与できない体制づくり”と謳って「外国資本による企業買収や土地買収が困難になる法律の制定」「外国人労働者の増加を抑制し、外国人参政権を認めない」とあり更に保守色が濃い。

 尤もこういった重点政策は、参政党特有のものではなく近年にあって、新興の保守政党に特有のもので目新しさはない。過去にも『太陽の党』『次世代の党』が類似かそれに近しい政策を訴えていた。では参政党とこれらの決定的な違いは何かというと、保守論壇中央からの強力な支持があるか無いかの一点である。

・参政党は保守層からの支持を得たのか?
筆者制作
 2014年に概ね日本維新の会から分派し、『太陽の党』と合流した『次世代の党』は、同年の衆院議員選挙に臨んだ。比例ブロックでの合計得票は約144万5000票で今回の参政党の全国比例約176万8000票と大差ない(但し、衆院比例は地域ブロックなので当選者は無かった)。しかし次世代の党は、保守論壇中央と呼ばれる岩盤層(当時―正論、WiLL、VOICEなどの保守系論壇誌日本文化チャンネル桜などのCS放送局など)からの熱烈な支持を受けた。石原慎太郎氏が最高顧問となったことも大きく、保守論壇中央が主導する形でネット保守を巻き込み一大運動を展開したが、小選挙区当選2議席のみと惨敗した。

 参政党は次世代と似たような政策を訴えているものの、保守論壇中央から支持らしい支持を受けていない。参政党の「看板」として精力的に街頭演説等を行い、ネットに極めて多く露出した以下の五名(参政党は彼らを”ボードメンバー”と呼んでいる)は、一部を除き保守論壇中央からかなり遠い位置にいるからだ。五名とは、事務局長の神谷宗幣氏、それに川裕一郎氏、松田学氏、赤尾由美氏、吉野敏明氏。但し、同党のタウンミーティング等のチラシやサイトには、川氏の代わりに武田邦彦氏が入ることが多く、事実上党の看板は神谷氏、松田氏、赤尾氏、武田氏、吉野氏の五名である。

 神谷氏については後述するが、この中で最も保守論壇の中で知名度があるのは武田邦彦氏であることは間違いない。武田氏はネット保守層から熱狂的な支持を誇るDHCテレビの『真相深入り!虎ノ門ニュース』のレギュラーを2015年から勤め、著書のファンも多かったが、2021年12月に参政党から参院選に出馬することを理由に同番組を降板した経緯がある。

 松田氏(2012年の衆院選日本維新の会から比例南関東で初当選)は前述した2014年の衆議院選挙で次世代の党から神奈川7区から出馬したが落選。下野後は、活動を主にネット動画に移したが、現在の保守論壇中央(―HANADA、WiLL、正論などの保守系論壇誌DHCテレビなどのネット放送局など)の中枢に居るわけではない。

 赤尾氏は右翼活動家で元衆議院議員赤尾敏氏の姪として一部の界隈では著名だが、これも同様に保守論壇中央で大きな活躍の場があるというまでは言えない。吉野氏については歯科医であり、参政党以前では保守論壇中央どころか保守界隈にあってもほぼ無名の評価だったと言える。

 このように、参政党の「看板」は唯一武田氏を除き、保守論壇の周縁に位置する人々であり、保守界隈の重鎮らがこぞって支援した次世代の党の支持構造とは大きく異なる。参政党は今回の参議院選挙で選挙区すべてに候補者を立てたが、この中でも保守界隈で名の知れた人はほぼゼロであるといってよい。今回保守論壇中央は、個別の自民党議員(―青山繁晴氏、宇都隆史氏、片山さつき氏、山谷えり子氏、山田宏氏…いずれも全国比例)などの支持に徹した(図参照)。

 よって参政党は、新興の保守政党の主張をトレースしているものの、保守論壇中央からの支持らしい支持は無く、よってそれに付帯するネット保守からの支持も勢いを欠く、という処であった。つまり参政党は、いっけん次世代の党のような「ネット保守政党」に見えるが、その支持基盤の実態は異なっているのである。

 だがこれを以て、今回参政党が2014年の次世代の党と類似した得票(比例で約176万8000票)を得た理由はますます摩訶不思議になる。参政党が単なる「ネット保守政党」なら次世代の党の得票より明らかに減るのが自然だからだ。つまり参政党はネット保守から一定の支持を受けたものの、それ以外の「何者か」から大きな得票を受けたのである。彼らは誰なのか。

・強烈な「オーガニック信仰」
筆者制作
 参政党の三つの重点政策の二番目、「食と健康、環境保全」にその答えが隠されている。参政党公式サイトによれば、”化学的な物質に依存しない食と医療の実現と、それを支える循環型の環境の追求”と謳って「医療費抑制」「有機農業・農法等の推奨」などとあり、やや大味で漠然としている。共通して分かるのは”健康”への執拗な拘りであろう。

子供たちの話だけじゃないんですよ。先輩方、年配の方々にも関係があるお話です。学校の給食でいいもの出すでしょ。要は、国産というか千葉県産に限定したらいいんですよ。千葉県産の物。しかも有機無農薬。ね、できれば指定栽培、そういったものに変えるんです。コストは3、4倍に上がりますよ。いいんです。だってそのお金は一次産業やっている人にいくから。(中略)さらに子供にいいをモノ食べさせたら、子供の病が減ります。荒れなくなります。学力が上がります。絶対そうなりますから。はい。そしたらそこで医療費が下がるんですよ。子供の医療費無償化をするんだったら、学校給食にお金をかけてください。

―2022年6月29日神谷氏千葉での街頭演説,強調筆者

 有機無農薬へのこだわりはまず頷く部分があるものの、それで子供の病が減ったり、学力が上がることとの相関、根拠は一切示されていない。これは典型的なオーガニック信仰の一種である。オーガニック信仰は、戦後の大量消費社会の亢進に疑問を示した先進国に住む、意識の高い比較的富裕な消費者層から始まる。有機農法や無農薬産品、自然由来製品等にこだわり、それを徹底することで心身が浄化され健康体になり、結果的に社会が改良されるなどとする発想である。

 これは日本にも輸入され、「食の安全」の美名とともに場合によっては「食品添加物拒否運動」として広まった。1999年にベストセラーになったが賛否が分かれた著書『買ってはいけない』(金曜日)などが書籍としてはその代表のひとつである。私が確認しただけで、参政党のオーガニック信仰ともいえる発言は、さらに過激な形になり他の候補の演説にも頻出する。

悪性リンパ腫を患ったが現在は健康であるという男性から、食品添加物と体に悪い農薬などの話をしてほしい、旨の質問を受けて)

悪性リンパ腫に限らずですよ、白血病とかでも限らず、普通のがん、骨肉腫もそうです。まず(甘いものを)やめなきゃいけない。なぜかっていうと、まずその、グルテンが免疫かく乱物質から発がんさせやすくなるのもそう。ね、それから糖類を採ってる、砂糖類を採ってると、ね。炎症がみんな強くなるんです。天然の三温糖ですとかね、羅漢果ですとかね、甜菜糖とかですね、関係ないです。仮に代用甘味料としましょう。アスファルテーム。(中略)アスファルテームが分解するとメチルアルコールができるんで、発がん物質になる。だからダメなんです。結局は甘いものは何もかもダメなんです。人工甘味料でもダメなんです。蜂蜜もだめなんです。(中略)これらのものに加えてもっと強い発がん物質である食品添加物。これはもうひどいですよ。(中略)

 100g200円の豚肉をミンチにしますね。調味料入れますでしょ。焼くでしょ。それで味付けしますよね、デミグラスソースとか入れるんだから、玉ねぎ使ったりニンジン使ったり、出来上がりますと。それを真空パックに入れますと。そのパックもちゃんと、石油から作るんだから石油がいるでしょ、そこになんとかのハンバーグって、セブンイレブンの何とかハンバーグって、和風ハンバーグとかってなるでしょ。(中略)ところが100g98円とかで売ってるわけ。ありえないでしょ。どうやったら安くなるんですか。

 それは、クズ肉を使うしかない。本来だったら廃棄処分にする。例えば死んだ豚とか。ね。あるいはそもそも全部内蔵取っちゃったあとの余ってる部分の、豚の顔とか牛の顔とか、或いは糞便が詰まってる普通使わない大腸とか。こういうとこを使うわけですよ。そういうのを使うと凄いにおいがします。食品添加物が臭いを消すんです。においを消したらハンバーグっぽい味にしなきゃならないから、合いびき肉だから、豚のエキスとか牛のエキスとか、食品添加物だからそれっぽい味を出すわけです。(中略)

 こういうの聞いたら、白いアイスクリームも食べられないでしょ。スジャータとか死んでも使えないでしょ。うちでもそうですよ。スジャータが牛乳だと思ってて、カップに入れてちゅるちゅる飲んでて、てんかんの子がいたの。止めると発作が無くなる。本当にダメなんだから。(中略)

 要するに、家で作って食えってことなの本当に。一番いけないのはコンビニの弁当とかを、電子レンジでチーンってやって、みそ汁代わりにカップヌードルを飲んでるとかなんだか、中にコーディングしてるわけでしょ、毒の水をわざわざ毒性を強くして、電子レンジで化学反応を起こして食べてる。ていう人たちががんになってるの。もう全員って言っていい、もう。本当は国立がんセンターとかでこの話しないといけないけど、何で言わないかって言ったら、石油を輸入するなって、これもう穀物メジャーとか、オイルメジャーとかね、ビッグファーマーとか、上に居るのがそれこそ国際金融資本なの。この人たちの命令で、日米安保だけじゃなくて、日米合同委員会ってのがあって、それでお前らこういう法律作れって、(アメリカの)軍人が日本の官僚に言って…(後略)

―2022年6月29日吉野氏埼玉県川口市での街頭演説,括弧内、強調筆者

 ここまでくると、論評のしようがない。どこから突っ込んでよいのか分からない。これを吉野氏は、国際金融資本や日米合同委員会による圧力や情報操作の仕業としている。典型的な陰謀論と評されても致し方ないのではないか。或いはいわゆる「ニセ科学」なのではないか。そもそも吉野氏は歯科医で歯学博士ではあるが、医学博士(医師)ではない。或る疾病の原因を「これ」と決めつけることに問題はないのだろうか。また一般に流通している加工肉に関して、誤解を生むような表現はいかがなものだろうか。このような言説が、参院選挙の期間中、堂々と喧伝されていたのである。

・反ワクチンとオーガニック信仰
オーガニックのイメージ(写真:アフロ)
 さらに参政党の”健康”への執拗な拘りは有機農法・無農薬・食品添加物禁忌を跳躍して、「純粋な身体に不純な異物を入れることは良くない」という発想の元、コロナワクチンの接種拒否へと垂直に向かう。

…グローバルな全体主義ですよ。コロナの問題もね、あんまりいうとまた(動画が)削除されて迷惑かけるからあんまり言わないけどね。だけどみんな気づいたでしょうコロナで。なんかおかしいって。この気づきが日本人を動かしてますよ。他の国だって動きはじめましたよ国民が。彼ら(グローバリスト)の利権のためにウクライナ紛争だって起こったじゃないですか。世界中の国民が迷惑してるじゃないですか。我々の敵はグローバル全体主義。そのために自由を守る、国民国家を守る、それが参政党の立場です。(中略)2年半もみんなを家に閉じ込めてね、免疫の威力を下げてね、そしてね、言っちゃいけないアレ(コロナワクチン)を打ってね。みんな免疫力下がっちゃってるでしょ。(動画が)削除されるかもしれないけど。削除するってことはね、向こう(グローバリスト)がね、焦ってるんですよ。本当のことがばれちゃうから。(後略)

―2022年6月29日松田氏大阪府大阪市での街頭演説,括弧内、強調筆者

…なんでこんな、お注射みたいなものがポコポコうたれるかっていうと、製薬会社の利権なんですよ。完全に。ここ(製薬会社)はめっちゃ金持ってんの。厚生労働省とか大学とかよりも病院よりも、お金持ってるから、こっから金貰わないと研究とか医者だったら開業ができない訳ですよ。お金欲しい。そして定年退職したら天下りとかもさせてくれるわけ、年収2000万とかもらって。めっちゃおいしいですよ、だから逆らわないんです。(中略)

 最初は頑張ってたと思ったんですよ、コロナの時とかにね、だんだん厚生労働省とか変わってきて、国民は嘘の情報を出すようになってきたんですよ。彼らがやってきたことは、こっそり飲み会やることと、自分たちがお注射を打たないことですよ。医者だってわかってるわけですよそんなの。医者が自分たちの子供たちに、お注射を打ってない訳だから、なんでそれを一般の国民がポコポコ打たないといけないんですか。打ちたいんだったらいいですよ。10回でも20回でも打ってください、止めません、そんな打ちたいなら。(中略)

 ちゃんとした情報を伝えないとだめですよ。何で伝わらないかっていうと、お金で抑えられてるから。とにかくコメ食に戻す。和食に戻してロカールフード法制がいまね、立憲民主党川田龍平さんたちが作ろうとしてるから、そういうの応援するんです政党の枠を超えて。つまり地域・地産地消しましょうっていう法律とか条例を作って、とにかくそこに予算付けるの。地元で給食良いもの食べさせたかったら、この法律を使って予算を付けれるようにする。種子法潰されちゃったんで、もう一回地域の条例とか種子法作って、日本のタネ(種子)を守るんです。

 そういうことやってくと、一次産業の保護になり、そして農業の場でも農薬肥料を使わない農業ていうのが、元に戻るんです。戦前の従来型の農業に戻るんです。最初は生産量落ちますよ、落ちますけど、落ちた分は数増やせばいいの。ね。農業でちゃんと儲かる仕組みを造ったら、若者農業やりたい人いっぱいいるから。いまの日本の若者はね、ココロ結構、かなりきれいなんですよ。だから人の役に立ちたいと思ってる若者いて、みんなに美味しい健康な野菜とかね、作れるってなったら、そこそこ収入あればやりますから。グローバル企業に入ってね、人をだましてお注射打って儲けてたってね、ココロ苦しいじゃないですか。(後略)

―2022年6月23日神谷氏千葉市での参政党講演会,括弧内、強調筆者

 喋った内容がYouTube動画に転載されると、削除される恐れがあるから、「アレ」とか「お注射」などとぼかしているが基本は反ワクチン一本槍である。また「がん」に関してことさら深いこだわりを持っている。

 とりわけ神谷氏によると、日本は先進国の中でも近年がんが急増しており、その原因に食品添加物があるというが、医学的根拠は示されていない。がんの発生メカニズムには謎の部分も多い。高齢化も原因のひとつとされるが「これだ」と断定できる因子はない。通常、複数の因子が重なって起きるとされる。にもかかわらず「がんの原因はこれだ」と医学博士(医師)でもない人間が公衆に向かって断言してよいのだろうか。

 参政党が一貫して主張しているのは不純物のない、「混じりけのない純粋なる何か」であり、それが有機農法食品添加物禁忌へとダイレクトにつながっている。彼らの中では反ワクチンと無農薬・有機農業・食品添加禁忌は一本筋が通っている。まず彼らの頭の中には「かつて存在した純潔な生活・農業・健康」が至高のものとして存在し、それが現在の医療や大資本(グローバル企業、グローバリスト)によって「汚染」されているという考え方である。

 もうお分かりかと思うが、こういった主張は、戦後の先進国の中で反大量消費社会運動などとして勃興し(もちろん国によって差異はある)、概ね「リベラル」層の中で喧伝されてきたきらいがある。なぜなら大量消費社会をけん引しているのは大企業・資本家であり、製薬会社と政界は結託して巨大な支配層を形成していると考えているから、既存権力に対してアンチになるからである。よって参政党も、自民党に対してきわめて批判的で、寧ろ敵愾心すらあるように思える。参政党が「自民党の補完勢力」などと揶揄されているものが散見されるが、それは大きな間違いで、彼らは自民党=グローバル企業と考えているから、自民党と親和性は薄い。

 しかし参政党の面白いところは、こういった一見してオーガニック信仰・反大量消費社会・自然産品礼賛を謳っておきながら、”日本の舵取りに外国勢力が関与できない体制づくり”と謳って「外国資本による企業買収や土地買収が困難になる法律の制定」「外国人労働者の増加を抑制し、外国人参政権を認めない」などと急に排外的な主張が混じっていることである。だがこれは何ら不自然ではない。

「混じりけのない純粋なる何か」をそのまま延長していくと、「日本は純血の日本民族だけが独占する、混じりけのない国民国家であるべきだ」という結論に行きつくのは当然の帰結だからだ。

 参政党と似ているとは全く言わないが、かつて有機農法や無農薬をことさら礼賛し、自然との調和や自然の中でのキャンプや観光を推奨し、健康増進(禁煙、禁酒など)を展開した政党が戦前のヨーロッパに存在した。「混じりけのない純粋なる何か」を推し進めると、必然的に純血主義に行きつく。だから彼らは、添加物とか農薬とかが大嫌いで、国産とか(国産の)種子とかに拘る。

 こうして「不純である」とみなした所作や人々を排斥する行為を強めていく。繰り返すが、参政党がこれと似ていると言っているわけではない。歴史を振り返ってみると、偶然にもこうした事例があるよ、と言っているだけだ。この問題については、既に「排外主義と有機農業」に関しての専門書が刊行されているので詳細はそちらに譲る。

・オーガニック信仰と保守要素の合体…突然参政党の主張に目覚める人々
オーガニックのイメージ(写真:アフロ)
 参政党は、オーガニック信仰(延長するとそこに、不純物であるとみているワクチンへの禁忌も入る。そしてそこには常に「ニセ科学」が付きまとっている)に、ネット保守の要素を合体させた『オーガニック右翼(保守・右派)』という、私自身、この規模で展開されているのを初めて目撃した国政政党である。

 参政党の演説や集会の内容を仔細に点検していくと、「国防の重要性」とか「愛国心の大切さ」とか「憲法9条改正」とか「先の戦争への肯定(彼らのいう自尊史観)」とか「祖霊崇拝」とか「反リベラル・マスメディア」などという、いかにも保守色の強烈な、いかにもネット保守が好みそうな言説は、「主・従」でいうと明らかに「従」である。従とはいえそれなりに喋ってはいるものの、その内容は既存のネット保守の言説や手垢のついた歴史修正主義と大差ないので、ここに改めて書くことは省く。参政党の実際の街頭や講演会等での内容は、圧倒的にオーガニック信仰である。

 そして私が定点観測してきた数百に及ぶ、熱心な参政党支持者の人々は、驚くほど政治的に無色であり、むしろ参政党支持以前には政治自体に関心がほとんどないような、政治的免疫が全く無いような人々が多い。でいて自然食品や有機野菜などを好んで摂取する、消費者意識の高い比較的富裕な中高年や、自分の子供に食の安全を提供しよう思っている女性層が、あまりにも、驚くほど多い。

 それまでヨガ教室に熱心に通い、自然食品を愛好し、個人経営の自然派茶店が行きつけである、とフェイスブックに書いていた人が、ある日突然、参政党のYouTubeに感化されシェア・投稿しだす。それまでインド等の南アジアを放浪し、自然の偉大さや神秘に触れる感動的な旅行記を寄稿していた人が、ある日突然、参政党のYouTubeに感化され…。このような事例は観測するだけで山のようにあるし、私の周辺にも極めて多い。そして一様に、参政党支持以前は、政治的に全くの無色透明であり、選挙にも全く関心が無いといった人々ばかりなのである。

 彼らは政治的なリテラシーをほとんど持っていない。参政党のオーガニック信仰の後に必ず付随される従の部分、つまり「憲法9条改正」だの「外国による侵略の危機」だの「太平洋戦争の肯定」などの主張に触れても、それが「一般的にいうところの右なのか左なのか」という鑑別基準すら持っていない場合が多い。

 参政党は徹底的に日の丸を隠す。保守派の集会にあるように、開会式で君が代を合唱したりはしない。如何に政治的リテラシーが低くても、それをやったら「極右」などと不当なレッテルをはられることを知っているからだ。参政党は新興の保守政党が必ずやる、「国旗掲揚」「国歌斉唱」をやっていない。その主張が右なのか左なのかも良く分からない人々にとって、「国旗・国歌」の記号さえなければ、それはもう全然「右」とは見做さない。

 よって参政党支持者の大きな部分は、政治的免疫が絶無の無党派層を中心とし、さらにその中でも消費者意識の高い、中産・富裕層を中心としたオーガニック信仰によるものである。それが結果的に、「混じりけのない純粋なる何か」の延長としての純血主義、国粋主義に繋がったとしても、そもそも彼らは国粋主義とは何なのか、その言説が悪い意味で何を意味するのかの判断基準を持っていない。従の部分の保守的要素は、主の部分であるオーガニック信仰さえ受け入れられれば、まずすんなりと受容される。

 勿論、参政党の従の部分、つまり強い保守的要素に大きく魅かれて支持を決定した人々もそれなりに存在する(なぜならこの主張は、ネット保守の世界観におけるテンプレートだから)。しかし参政党の動画視聴者が競うように「友人や家族に拡散」しているのは、保守要素ではなく、食品添加物人工甘味料やがん情報(発がんの原因について)や、コンビニ食品、加工品、砂糖、小麦、食肉の危険性と、そういった危険性を伝えまいとする国際金融資本(ユダヤ系を含む)による情報操作、ワクチンを巡る壮大な陰謀などの、オーガニック信仰に大なり小なり関連する動画である。

 彼らには驚くほど「ネット保守」のテンプレ的言動が見られない。朝日新聞が日本のメディアの中でどのような立ち位置にあるか。あの戦争とはどのようなものであったのか。基礎知識を全く持っていないように思える。だからこそこうした保守要素に微温的に共鳴はするも、特定のリベラルメディアの社名を名指しした呪詛や、リベラル系野党や議員個人への激しい攻撃というのが殆ど見られない。

 前提知識が無いから攻撃の仕様がないからだ。ただし、全くの「無菌状態」の中に従としての保守要素が混ぜられるので、面白いようにゼロ年代初頭に使いまわされた「ネット保守的世界観」の入口に立っていく。但しそれはそこまで強烈なものではない。

「オーガニック右翼(保守・右派)」の特筆するべき点はこれである。こういった人々が、参政党支持の主力であることはほぼ疑いようがない。彼らの名誉のために言っておくと、オーガニック信仰をしている人々が全員政治的免疫が無く、歴史や社会に対するリテラシーがない、とは言っていない。そのような人々が多く観察されるようだ、と言っているだけだ。また私自身、有機農法有機栽培を否定しているわけではない。寧ろそういった方法で販売される農産品を好む方だ。だがそこに「ニセ科学」が執拗に入り込むのは断固として認められない。

・私と神谷宗幣氏―「ONE PIECEのような政治をしよう」という謎の名刺
2014年に栃木県護国神社で行われた私と神谷氏の講演会公式パンフ。この時すでに私は、保守論壇から離別しつつあった。
 最後に、本稿冒頭で記した私と神谷氏の邂逅について書く。私が神谷氏に初めて出会ったのは、2013年のことであった。正確には約9年前である。このころ私は単著を複数出し、某保守系CS放送局でレギュラー番組を持ち、前衛漫画雑誌『ガロ』の版元として著名な青林堂から刊行されていた保守系雑誌『JAPANIZM』の三代目編集長をやっていたころで、保守業界に若手としては確固たる基礎を築きつつあった。

 氏と初めて会った場所は保守系の集会だったと思われる。当時神谷氏は2007年に大阪府吹田市の市議会議員に初当選した後、2012年に衆議院議員に転身を図り自民党から公認されるも、維新の候補に敗れて落選した。大阪在住の彼が東京の保守系集会にわざわざ出てきたのは、落選後の身の振り方に何か思うところがあったからかもしれない。

 神谷氏から差し出された名刺のことを今でも覚えている。氏は2010年に「龍馬プロジェクト」という保守系地方議員主体の任意団体を主催していて、その旨が印刷されていた。当然坂本龍馬的な何か、の熱意があるものと思われたが、名刺をふと見ると「ONE PIECEのような政治をしよう」と大きく書かれてあった。

 ONE PIECEとは少年ジャンプに連載されている例の世界的な漫画だ。そして主人公たちは”海賊”である。「政治家を名乗る人間が、反社会的勢力のような活動をしようとは、どういうことでしょうか。官憲と戦うんですか。神谷さんはブントとか革協同かなんかなんですか」と聞こうとしたがやめた。流石に気の毒だと思った。

 ただし熱意だけはあって、喋りの達者な好青年に思えた。親の経営するスーパーを継いで、苦労なさったと語っていた。関西大学を卒業されていたので、同じ関西圏の私大を卒業した私はなんとなしに親近感を持った。私よりも5歳上だった。『JAPANIZM』編集長として、何回かインタビューを取った。具体的にどのような誌面だったか忘れたが、国会図書館で確認すれば、当時私が自ら書いたインタビュー記事が見つかるはずである。これがきっかけで、神谷氏は青林堂と接点を持つようになった。

 神谷氏は私が青林堂を離れた後、『大和魂に火をつけよう 日本のスイッチを入れる2』(2014年)、『子供たちに伝えたい「本当の日本」』(2019年)、『国民の眠りを覚ます「参政党」』(2022年、吉野敏明氏との共著)、『参政党Q&Aブック基礎編』(2022年)など、立て続けに著作を発表した。そもそも、参政党の松田氏や赤尾氏、吉野氏など主要な「看板」の人々はほぼすべてが青林堂から著書を出している。詳しいことは知らないが、青林堂執行部の方針と神谷氏や参政党の政治観がマッチしたのだろう。明らかに参政党の出版方面での協力者は青林堂である(悪いことだとは言っていない)。

 ただし神谷氏自身が、保守思想についての知識をあまり持ち得ているとは思えず、すなわちバークや江藤淳半藤一利保阪正康西部邁も読んでいないようだし、どちらかというと具体的な政策や主義ではなく「漠然とした大きな熱意」のみ先行で、知識の積み重ねや体系的な主張を感じられなかったことから、いわゆる保守論壇の大御所雑誌(当時のWiLL、正論、VOICE等)に声がかかることはあまりなかった。

 言論人という感じではなく、大阪の活動家といった評価だった。私が出演していた某保守系CS放送局も紹介したが、単独出演が1,2回というだけで、レギュラーとして定着しなかった。首都圏の保守界隈は、落選直後に上京してきた保守系元議員に冷淡だ。次の選挙のために利用されるだけなのではないか、という警戒の嗅覚が働くからだ。それでもある程度の見識があれば門戸は開かれるが、神谷氏はそうではなかった。だから氏は保守界隈の中に居るには居たものの、常に周縁の存在であり続けた。

 神谷氏は2013年になるとCGSというネットチャンネルを作って、その中で動画の投稿を始めた。神谷氏に好意的な中堅の保守系言論人が何個か番組を持って、それなりに人気になった。ちなみにCGSとは、「Channel Grand Strategy」の略で、直訳すると「大戦略」という風になるのだろうが、同じタイトルの戦略ゲームとどのような相関があるのか聞いたことは無い。

 2013年中盤から14年にかけて私は神谷氏と一緒に講演会に呼ばれたりするようになってそれなりに接近していたので、2014年3月からこのCGSの中で番組を持たないかと提案されて、特に断る理由もないので承諾した。番組は30回ほど続いたが、この時すでに私自身の立ち位置が偏狭な保守界隈から距離を置くものに変わっている時期だったので継続に疑義が出るようになった。

 加えて当時人気だった政治系ユーチューバーのAと、神谷氏と私の三人で鼎談番組をやらないかと誘われて、私が「Aの知識水準では、鼎談するに値しない」と結論して拒否したために、これが勘気に触れたのだろうか、以後神谷氏とは急に疎遠になった。対立があったわけでも、喧嘩したわけではない。ただ疎遠になっただけだ。因みにこのAは、後に参政党の創立メンバーとしてかかわったのち、方向性の違いから同党を脱退している。

 少なくとも私が神谷氏と接点があった2013年・14年の時期、氏はオーガニック信仰みたいなことを全然口にしていなかった。食品添加物拒否なんて一言も言っていなかったし、農業がどうの、有機農法がどうのなどというのも皆無だった。この時、彼の中にオーガニック信仰は存在せず、手垢のついた即席ネット保守のようなことを猛烈に主張していた。

 一緒に行動したり仕事をしたりしている人、それが特に目上の人だった場合、すぐに強く影響を受ける印象があった。例えば「大日本帝国憲法は今も有効だ」と教えられれば、同じことをすぐ自分の主張として繰り返す。「白村江の戦いは日本軍が勝利した」と教えられればすぐ同様に言う。どう考えてもウソ・出鱈目なのに、自分で調査したり分析したりする最低限のスキルが年齢の割にやや低いのかなとも思った。ただ総じて同業他者の悪口や陰口を言ったりする人ではなかったので、その点は信頼できると思った。要するに「熱い兄貴」なのである。

 氏の古典的なネット保守的価値観、しかも、あまり綿密に練られていないネット保守的世界観が根底にあり、その後、人間関係の中でオーガニック信仰に影響を受けたため、両者が合体してそれが参政党の根幹を形成したのではないかと私は考えている。結果的に私が、神谷氏やのちの参政党と、青林堂との接点を作ったことは、良い事か悪い事か良く分からない。

 ただし神谷氏の保守的心情が参政党の候補全部に浸透しているかどうかは疑わしい。例えば参政党から選挙区で出馬した候補の中には、参政党の保守要素とかけ離れている人もいる。

 東京選挙区から立候補して落選した参政党の河西泉緒候補は、朝日新聞の質問に対し、「防衛力増強」「敵基地攻撃能力の保持」について、明確にNOとしている。「非核三原則の堅持」についてYESを示し、また「同性婚」「LGBTの権利擁護」についても明確にYESと答えている。

 これだけをみると河西候補は社会民主党立憲民主党から立候補してもよさそうなものだが、参政党の保守的要素ではなく、オーガニック信仰のみに共感している候補も存在するというアンビバレントな状態になっている。参政党は単なる「ネット保守」政党ではない。全体としてみればオーガニック信仰を基調として、そこに保守的要素が「後付け」された異形の「オーガニック右翼(保守・右派)」と呼ぶべき右派政党である。

 今回の参院選挙で参政党は政党になり、神谷氏は国会議員になるので、有権者の付託にこたえるべく、出来るだけ事実や科学的なデータをもとに政策議論を展開していただきたいとは老婆心ながら思う。神谷氏の保守界隈デビューの初期段階で彼と関わり、かつ彼を応援して、少なくとも保守業界との接点を斡旋した経験のある私としては、これからも参政党と神谷氏に注目していきたい。(了)

記事に関する報告

古谷経衡
作家/評論家/一般社団法人 令和政治社会問題研究所所長
1982年北海道札幌市生まれ。作家/文筆家/評論家/一般社団法人 令和政治社会問題研究所所長。一般社団法人 日本ペンクラブ正会員。立命館大学文学部史学科卒。テレビ・ラジオ出演など多数。主な著書に『愛国商売』(小学館)、『日本型リア充の研究』(自由国民社)、『女政治家の通信簿』(小学館)、『日本を蝕む極論の正体』(新潮社)、『意識高い系の研究』(文藝春秋)、『左翼も右翼もウソばかり』(新潮社)、『戦後イデオロギーは日本人を幸せにしたか』(イースト・プレス)、『ネット右翼の終わり』(晶文社)、『欲望のすすめ』(ベスト新書)、『若者は本当に右傾化しているのか』(アスペクト)等多数。

出典

https://news.yahoo.co.jp/byline/furuyatsunehira/20220711-00305127

自分はいまいち心酔できない。

すくなくとも

まずさきに旧統一教会を排除すべき。

自民党は責任をとり議員をほかの党員にすべき。

結果はみえているが

そのそぶりは欲しい。

自分が出馬

供託金でも60万円

市会議員選でも300万費用が掛かるという。

県会議員だともっとかかるのだろう。

受からなかったらどぶに捨てるようなものだ。